依存というにはあまりに重度
「お前は、イヅミを恨んだことがありますか」
アポロが呟いた言葉は、とても唐突なものだった。
「恨んだこと、ですか」
ランスは少し、考えた。一番古い記憶は、水槽越しに会話をしているところ。イヅミは研究員であり、ランスは被検体だった。それは今も変わらずに関係の底に根付いている。イヅミがいないと生きることすらままならないランス。そしてきっと、ランスがいなくなったら生きるのすらやめてしまうであろうイヅミ。
「一度裏切られた時は、恨んだと思います。けれど、私を強奪しに来てくれた時、それが全て消えてしまったんですよ」
震える声で、嘘を言った少女。それでも、その嘘は裏切りなんかではなく、自分の為だけに、発せられたもの。それさえ愛おしいと思うのは可笑しいのだろうか。ランスはそれでも良かった。何が普通で何が可笑しいかなんて、あそこでは教えてはくれなかったから。
「彼女が私の隣にいてくれれば、それで良いんです。それさえ守ってくれたら、私はこの先イヅミを恨まないでしょうね」
そもそも、人間でない私が普通である理由もない。狭い世界で、彼女さえ居てくれればいいなんて、それでも。
「…それくらいに、私はイヅミに依存しているのでしょうね」
自嘲気味に笑ったランスはそう言った。そのまま部屋を出て行く背中を、アポロは何も言わずに見送る。
「依存、ですか」
ランスが放ったその言葉は、とてつもなく切なく、輝きに満ちているような気さえした。
依存というにはあまりに重度
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