首紐
指が迷うように伸びてきて、だから久我原はそれを掴んで留めた。別に拒否をするつもりはなかったが、迷っている相手に身を委ねるほど落ちぶれてはいない自負はあった。
「そういうことが、嫌なわけじゃないの」
身売りをしたことはなかったけど、だからと言って処女という訳でもない。相手を見定めて、享楽の夜を手に入れる、なんてきっと、世界の半分くらいはやっていることで。だからなんとも思わない。誰かに謗られても、久我原は愉しかったからそれで良い。
でも、今は違う。
目の前の指は、迷っていた。だから、止めた。こんな指ではたいした悦楽も得られないに違いない。
「本命にしろ、なんてことは言わないけどね」
「…売る、のか」
「いいえ? 別にお金をとるつもりもないわ」
ただ、と続ける。ただ? と首が傾げられる。
「ちゃんと扱って欲しいだけなの」
「…経験なら、ある」
「そういう意味じゃあないわ」
どうせやるなら楽しい方が良かった、恋心なんてものが捧げられてしまうのだから、余計に。
「どうせ貴方には私を真面に扱えなんてしないでしょう?」
弱味を握られたくないから、久我原はいつものようにそう微笑んで、押し倒すこともしない尾形の肩を軽く、突き放した。
*
どうせなら玩具みたいに扱って もしくはあなた 地獄に落ちて / 朔夜ちる
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