バニラ味の朝



 「すずくれさんっ!」
今日一日のスケジュールを確認していると、声と共に背中にもにゅん、とやわらかいものがあたった。
「おはよう、かな子」
「おはようございます」
ふんわり笑ったままぎゅう、と抱きしめてくるのは、こんな頼りないひよっこプロデューサーを信じて着いて来てくれる、かわいい子の一人だ。そんなに歳は離れていないが娘のような存在である。
 「なんか甘い香りするね?」
すん、と息を吸えばえへ、バレちゃいました? とかな子は笑う。そうしてポケットをごそごそとやると、出て来たのは可愛らしい包み。
「クッキーです」
その言葉にそう言えばこの子はお菓子作りが趣味だったなぁ、と思い出す。
「すずくれさん、良かったらどうぞ」
照れた顔で掌に置かれた包みを眺める。
丁寧なラッピングの中にころり、とした小さなお菓子が幾つか入っている。昨日、みんなに教える傍ら作ったんです、と頬を上気させてくる彼女はとてもかわいらしい。
「味見で少し減っちゃったけど、頑張って作ったんです」
「ありがとう。大事に食べるね」
かな子の作るお菓子は美味しい。以前ももらったことがあるのでそれは知っているし、何よりも私は甘いものがとても好きだ。
「前、すずくれさんが好きって言ってた味にしてみたんです」
顔を上げる。
「バニラ味、好きでしたよね?」
きっと気に入ってもらえると思います、と笑う彼女を頭をぽん、と一つ撫でて、
「ありがとう」
今日も頑張ろうね、そう言えば、はい! という元気な声が返って来た。


















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