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「え、青峰大輝をとった?」
二年ももう終わりに近い部活の後、天城は今聞いたことをそっくりそのまま返した。隣で諏佐も同じように驚いている。
「ああ。練習に参加しなくても良えていう条件付きでな」
「うわー…すごい条件」
「それでもとりたいくらい、すごい選手なのは確かやで」
「分かってるよ、僕らだってビデオ見てるんだから」
画面越しでも惹きつけられるような鮮やかなプレー。それの虜になってしまう人間がどれだけいるのかと考えてもきっとキリがない。
「若松とか、すごい怒りそうだな」
熱血、という言葉が似合いそうな後輩を思い出したのか諏佐が笑う。
「確かにー暴力沙汰にならないと良いねぇ」
「そこ笑い事ちゃうで…まぁ、若松もそこまで馬鹿やなやろ」
「分からないぞ」
「諏佐、お前が言うとシャレにならんからやめ」
人のいなくなった部室の電気を消して、鍵を閉める。
「鍵返し行ってくるわ」
「僕も行く」
「オレも」
「何や優しいなぁ」
にまにまする今吉に、すかさず諏佐が続ける。
「いや、青峰の話聞きたいだけ」
「ひっど! 諏佐ひっど! 天城はちゃうよな?」
「え? 僕も青峰目当て」
「ひっど…」
あからさまにしょんぼりしてみせる今吉を追い立てて職員室に向かう。
「で? 青峰と実際会ってみてどうだった?」
「あー…」
今吉が少し口ごもる。
「ちょっとな、多分二人が思ってる以上にアイツ、繊細やで」
「練習に参加しない、なんて条件出す奴がか?」
諏佐が首を傾げる。
「そ、練習しない理由は強くなってまうから。強くなりたくないのは、張り合いがないから、や」
へぇ、と諏佐と二人で呟く。新鋭の暴君が獲得した、真の暴君。興味は尽きない。
「失礼しまーす」
鍵を返す為に職員室に入る。こんな時間まで、お疲れ様です、先生方。いつもはしない感謝を口に出してしまう程寒い、冬の夜。
春が来る前のはなし
所変わって寮の天城の部屋。与えられた個室は三人とも何の因果か並んでいたが、集まるのは専ら天城の部屋である。理由は角部屋だからだ。多少騒ぐことがあっても苦情が来にくい。
「はー青峰入るなら僕は本格的にスタメンから外れるだろうなー」
今吉の瞳が眼鏡越しに動いたのが分かった。
「恨んどるか?」
「え、何で?」
きょとん、とした顔で返す。
「勝てば良いじゃん」
天城が望むのは桐皇の勝利だ。そのためになら二つ下の後輩にだってスタメンの座を譲る。
「ぶっちゃけ試合に出る回数がゼロになる訳じゃないと思うし。他の奴らはもっと悔しがるかもしれないけど、そこは、僕だし」
試合には確かに出たいが、天城の場合はそうも言ってられない理由もある。
「今年は、優勝しような」
「ああ」
「当たり前や」
確かに返事が返って来ることに安堵する。
「僕をインターハイに連れて行って! ついでにウィンターカップにも!」
「馬鹿、お前も試合出るだろ」
「青峰が来るからってサボらせはせぇへんよ?」
にっと笑う二人に、天城も笑顔を返した。
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