悲鳴と大きな音で人が寄ってきて、呆然とする花宮の代わりに誰かが教師を呼んできて。花宮はめでたく第一発見者となった。
 救急車に乗せられる森村はいつもよりもっと小さく、頼りない生き物に見えた。美しいその容貌も相まって、本当に其処に存在しているのか、怪しいくらいだった。その音が遠退いてから、教師が花宮を呼ぶ。
 花瓶がひとりでに落ちる訳などないと、教師も分かっているらしかった。
「誰か見たかね?」
問われて口ごもる真似をする。
「い、いえ、見ていません」
態とらしいその間は、優等生が誰かを庇おうとしているように映ったらしい。やはり積み重ねというのは大事だ。今此処で花宮を疑う者は一人もいなかった。
―――森村を除いては。
 けれどもその森村だって今は救急車で運ばれてて行ってしまって、そうすぐには戻って来ないだろう。結構な怪我だったはずだ。血だって大分出ていた。直撃ではなくとも花宮はそれを間近で見ている。
 さて、どう出てくるか。
 どうして森村は花宮の計算をすり抜けたのか。分かるような、分かりたくないような。教師はすぐに花宮を解放して、部活に顔を出す。すると原が遅かったね、と話し掛けてきた。
「なんか救急車来てたけどどしたの?」
「花瓶が落ちたんだよ。で、生徒が一人怪我」
「えー誰? 知ってる奴?」
「………森村」
「あー! あの。うわマジで? どうせ女の嫉妬とかデショ」
その言葉に花宮は、何を返して良いのか分からなかった。確かに花宮はあの、森村を嫌っていそうな女子生徒を使いはしたが、だからと言って花宮の動機が嫉妬だったかと言うとそうではない。
 ただ、見てみたかった。壊れてどうにかなる様を、この世の終わりを見せつけたかっただけだと言うのに。どうしてこうなっているのか。
「アレ、花宮がそんな顔するってことはマジのヤバい泥沼?」
「…近寄らないようにしとけよ」
「ウッワ、マジモンじゃん。忠告ドーモ。そうするわ」
森村見てる分には良いんだけどなあ、と原が言う。
 確かに、ショーウィンドウに飾っておくようなそういう見ているだけ≠ネら何ら違和感はないのだろう、とは思った。


















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