足元が崩れて太陽が語りかける



 働いていた会社が倒産したのは本当に突然のことだった。仮にもセキュリティ会社を謳っていたのに何処かからハッキングを受けて、それを危ぶんだ親会社になかったことにされたらしい。前々からあまり良い噂も聞かなかったし良いところで辞めようと思っていたけれども、まだ就職活動もうまく行っていなかったものだからさてどうしたものか、と途方に暮れてしまった。
 そんな中届いた、一通のメール。
 場所と時間、クジャクの置物の写真が送られてきただけだったが、誰からなのかすぐに分かった。

 ノーラン、と呼ばれて顔を上げる。久しぶりに見た俺の女神は一段ときれいになっているように見えた。
「ペネロープ。…って呼んでも良いのかな」
「勿論!」
「何か頼む?」
「スムージー。…って自分で頼むから大丈夫」
店員を呼び止めて注文した彼女は、やっと落ち着いて座った。どうやら走ってきたらしい。俺なんかのために走ってくれたのかと思うと、それだけで胸が満たされる。
「スムージーが来たら用件を聞いても良い?」
「スムージー来る前でも良いわよ」
にっと笑った彼女が本当に楽しそうで、俺もつられて笑う。
「困ってるかなと思って」
彼女が俺の会社が倒産したことを知っているのは今更なので驚かない。
「まあ、少し。それでも一応退職手当は出たし、のんびり就活でもするよ」
「ああ、ええとね、それなんだけど。一つ、紹介されて欲しいところがあるの。っていうか、その方が目的で来たんだけど」
「そんなことだろうと思った」
先を促すと、少しペネロープは緊張したような面持ちに戻った。そして幾度か深呼吸すると、
「私と一緒に働いて欲しいの」
信じられないようなことを言った。
 俺が目をぱちくりとさせたのが分かったのだろう、慌てたように彼女は付け足す。
「ああ、ええと、厳密には一緒じゃなくて、FBIって訳でもなくて、それでもこう、繋がりがあるっていうか、公的機関っていうか、時々汚職とか隠蔽はあるかもだけどそれでもあの会社ほど悪いことしてる訳でもないし、給料だって上がるし、それに、」
これこそが重要だと言うかのように。
「貴方が、安全」
「ペネロープは、」
 これは難しい質問だ、と思った。これは俺の方から彼女にする働きかけになる。俺は少し、まだそういうことをして良いのか、不安だ。
「その方が良い?」
質問は、彼女の領域に踏み込むことのようで。だからあの時も、呼んでもらえたのに応えられなかった。
「…そう思ってなきゃこんなことしない」
小さな声だけれどもその解えは聞けた。それで俺には充分だった。
「貴方が知ってる私は昔の私で、想像もつかないかもしれないけれど、私、本当に痛いのとかグロいのとかだめだし、そういうことする人が少しでも減ったらって思うし、そういうことした人間がいるなら全員捕まって欲しいし、そのためには私に出来ることなら何でもする、とも思う」
「うん、分かってる」
「だから、だからね。出来たらこの話、受けて欲しいなって思ってる」
「うん。じゃあ、まず、話を聞かせて?」
 だから頷く。彼女がしたことを知っていたけれども、俺はやはりこの美しい女神に首ったけなのだ。





キミが映る水溜まり @kimiutu_bot


















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