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木之本桜がひょんなことからクロウカードの封印を解いてしまって、友枝町で不思議なことが起こるようになってから半年ほどが経っていた。クロウカードを全部集めると決めた手前、不思議なことが起こって放っておける訳もない。
「しっかし…」
封印の獣・ケルベロスは困った顔をする。
「なんや、この状況…」
「かわいい…ですわね…」
わいわいがやがやと公園に集まっておしゃべりをしているのはぬいぐるみたちだった。なんともメルヘンな状況に、桜も知世もケルベロスも毒気を抜かれる。
「こんなこと出来るカード、覚えがないんやけどなあ…」
一体何のカードをどう使ったらこうなるんやろ、とぼやくケルベロスの横で、とりあえず封印しちゃうね、と桜は杖を握った。ぬいぐるみたちは興味津々に桜を見上げてくるが、逃げようとしたり襲い掛かってくるものはいない。友好的なカードなのだろうか、そんなことを思いながらいつもの呪文を言う。
「汝のあるべき姿に戻れ、クロウカード!」
杖の先にはいつものようにカードの形が作られ始め、そのまま問題なく終わるかと思ったが。
ぱんっと音がして、その形は霧散した。
「えっ!?」
桜が驚いたのと一緒に、ケルベロスも知世も驚く。
「さくら! もっかいや!」
「う、うん!」
しかし、何度やっても同じだった。まるで封印出来ないと言うかのように。カードになることを拒否されたようで、途方に暮れてぬいぐるみの中で桜は叫ぶ。
「なにこれえええ!? ケロちゃん、封印出来ないよ!?」
「何やこのカード…」
ぬいぐるみたちは桜が困っていることを分かっているのか、だいじょうぶ? だいじょうぶ? と聞いてくる。大丈夫じゃないよお〜と桜がへたり込むと、知世がまあまあ、と背中を撫ぜた。一見本当に可愛らしい光景である。普通ぬいぐるみは喋らないし動かないことを除けば。
その中でケルベロスだけは難しい顔をして、ぬいぐるみたちを見下ろしていた。
「………まさか、クロウカードやないんか?」
「ええー!? クロウカードみたいなカードってたくさんあるの?」
「アホー! そんなホイホイクロウカードみたいなカードあってたまるか! あれはクロウやったから作ることの出来たさいっこうの魔法の結集なんやで!?」
「じゃあなんで封印出来ないのー!」
ぬいぐるみたちはそれぞれだいじょうぶ? なかないで! なんとかなるよ! と言ってくれるが何とかなると言うのならば早く封印されて欲しい。
そんなことを思っていると、公園の端の方で歓声が上がった。勿論、ぬいぐるみたちの歓声である。
「人ですわ!」
「どうしよう、隠れなきゃ!」
慌てて滑り台の中に隠れると、先程まで桜たちのいたところに誰かがやってくる。
「はあ、こんなところにいた」
その誰かはぬいぐるみたちの真ん中にいたぬいぐるみを迷わず抱き上げると、その頭を優しく撫でる。
「まったく、遊びはそれくらいにしてね、螺(スクリュー)」
ぬいぐるみは応えるようににっこり笑ってから、目を閉じた。
「汝のあるべき姿に戻れ」
同じ呪文だ、と桜は思う。けれども違うのは、その手に杖がないことだろうか。
「………羽根川、さん?」
桜はその名を呼ぶ。毎日見ている、クラスメイトの名を。
羽根川風凛の手の中には、蒼いカードが収まっていた。
デフォルトネーム読み方
羽根川風凛(はねがわふうりん)(ドラッグ表示)
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