どうか、貴方に祝福がありますように。
シャーロット・ポップルウェルが死ぬと分かっていて犯人の要求通りに進んだのには、そう大それた理由があった訳ではない。
馬鹿と馬鹿と最低の自分勝手
とある事件に巻き込まれ、犯人の顔を見た訳ではないけれど完璧な仕事の汚点として狙われるかもしれない、そう言われ警護を付けてもらって数日間。警護だと言う早口の青年、ドクター・スペンサー・リードのことを好きになるのにシャーロットには時間が多すぎた。吊り橋効果、なのかもしれない。事件が無事に終わってまた日常に戻ればこの恋心はすぐに、恐ろしかった記憶と共に何処か遠くへ葬り去られるのだろう。そう思っていた。だから今を楽しもう、なんて。被害者の癖に生意気なことを思っていたから罰があたったのかもしれない。
家が襲撃され、刑事さんのうち一人は怪我をし、ドクターは連れ去られ、メイドの一人も大量の血痕を残して行方不明。犯人はドクターを助けたければシャーロットが一人で来れば良いと言った。電話を受けたシャーロットはパニックの中何処か冷静な部分もあって、ああ、犯人は知っているのだ、と思った。
シャーロットがドクターに好意を抱いていることに。
彼の仲間が何か言っている。この家には盗聴器も隠しカメラもない。カーテンが邪魔で外からは家の中は覗けない。ならばシャーロットの好意を知る方法は、監視をする方法は、一つしかない。行方不明になったメイドのことを犯人は言わなかった。ならばそういうことなのだろう。
怖くないと言えば嘘だった、嘘にしかならなかった。それでもシャーロットは抜け出す。きっと多くの人に迷惑をかける、シャーロットを見張っていた警官なんかは減俸ものだろう。それでもシャーロットはこの心に嘘が吐けない。最低だ、と思う。同時に人間なんてみんな最低だ、と擁護してしまう。
撃たれて悲鳴が聞こえてでもきっとシャーロットは笑えるから。泣いている声、メイドが心底馬鹿にした顔でこっちを見ている。それでも良い、シャーロットは馬鹿で良い。笑っている貴方がいるなら、シャーロットの明日なんか来なくたって構わない。
―――私の、
―――時間を、
―――あげるから。
「ねえ、笑って?」
prev /
next
ブラウザバックor戻る
ALICE+