好きでもないくせに



 暇ではないはずなのに。指輪の後があるから家族はいるが離婚だとかそういうものを乗り越えたあとなのだろうか。恐らく煽って言葉を引きずり出すことは出来なくはない。相手が例え捜査官だったとしても人間である限り、抜け道はある。それは私も同じだろうけれど。今日も今日とてアーロン・ホッチナーはセナ・堀越の家まで訪ねてきて勝手知ったると言うように椅子に座って紅茶を待っている。美味しくもない紅茶を待っている。以前彼は家の前の店でも良いと言ったが、そもそもそんなことを言うのならば彼が来る時に買ってくれば良いのだ。それをしないのだから、彼の一連の行動はただのサンプル取りなのだろう、と思う。
 私は彼に監視されている。
 私は何もしていないのに彼の囚人となっている。
 そう思ったら面白くて仕方なくなった。笑い出す私をホッチナー捜査官は訝しげに見ている。そりゃあそうだろう。怪しい人間が怪しく笑い出したのだから。ねえ、ホッチナー捜査官、と私は話し掛ける。
「もしも私が罪を犯したら地の果てまででも追い掛けて来て捕まえて」
「君はそうはならないよ」
彼は即答だった。突然何を、とすら言わなかった。
「そうはならない」
 だって答えが決まっているから。
「俺が、そうはさせない」
「…ずっと一緒になんかいてくれないくせに」
まるで恋をする女のようだ。笑いが引いてしまう。彼もそう思ったのか押し黙った。
「だって貴方は私のことが好きじゃない」
それは私も一緒だった。
「貴方にとって私は囚人も同然よ」
 笑って見せたらホッチナー捜査官の眉間の皺がまた深まった。


















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