絶対無理だと思っていたホグワーツから手紙を受け取り、グリフィンドールに無事組み分けされたその夜。リーマス・J・ルーピンの元に真っ白なワシミミズクが降り立った。
『校長室』
簡潔にそれだけが書かれた手紙を見て、どうしようかと迷ったものの、真っ白な美しいワシミミズクが自分を呼ぶように羽をはためかせるので、リーマスはそれについていくことにした。
『あら、もう校則を破るの?』
太った婦人の呆れたような声が後ろから背中を押していた。
 夜の学校は昼間の喧騒が嘘のように静かで、リーマスは異空間に迷い込んだような不安を感じる。それを読み取ったかのようにワシミミズクは頬に羽を擦り寄せた。
「案内、よろしくね」
小さく囁いた声が、余計に辺りの静けさを引き立てた。
 初めての夜に校則を破るのは、例え校長室に呼ばれているのだとしてもどきどきする。だからか、リーマスの目はしっかりと前を飛ぶワシミミズクを追っていた。灯りの魔法など知らないから、少しだけ闇に浮かぶ、その白い身体を見失うことなどないように。しばらくして、ワシミミズクはガーゴイルの上に止まった。
「ここが校長室?」
リーマスはワシミミズクに尋ねた。ワシミミズクは応えるようにコンコン、とガーゴイルをつつく。それからリーマスの肩に降りてくるのと同時に、ガーゴイルは周り出した。
 現れた階段を登り、扉を開けると、肩に止まっていたワシミミズクが、ひらりと飛び立ち、その先にいた少女の腕に降りた。
「おかえり」
どうしてこんな時間に、校長室に生徒が? しかも、自分を案内してくれたワシミミズクは校長のものではないようだ。良く分からないままでいるリーマスに、ダンブルドアは微笑んだ。
「彼女は#ナマエ#・#ミョウジ#。スリザリンの五年生じゃよ」
「よろしく」
銀色の髪に蒼い眸。冷たそうに見えるのに暖かみを感じる彼女が差し出した手に、思わず応えてしまう。応えてしまってから、ハッと気付いた。自分はこんな風に、人に触れて良い存在じゃない。慌てて手を離そうとするも、きゅ、と力を入れられて離せない。
「…あの」
「スリザリンと握手するのは嫌かな?」
にこり。その言葉に嫌味は感じられない。
「え、そんな、違…そうじゃなくて…」
「君の秘密は知っているよ、知った上で君と握手がしたかったんだ。それでもこの手を君は振り払おうとする?」
目を、見開いた。入学する時にこの秘密は誰にも漏らさないということで、校長と話が決まっていたのではなかったか。それでも目の前の少女はそれを知っていて、尚且つ、それでも普通の人間と接するように握手を求めている。どういうことなのかサッパリ分からなくて、リーマスはダンブルドアを見上げた。
「彼女は#ミョウジ#家のご息女でな、君の秘密を彼女のご実家に相談してみたところ、彼女が是非研究したいのだと名乗り出たんじゃよ。今は人狼に関する研究はあまりないからのぅ…。ゆくゆくは脱狼薬の開発を彼女に任せたいと思っているのだが…」
嫌かね? と首をかしげる老人に、リーマスは言葉を失った。嫌とか、そういう問題ではない。自分といることでこの人を傷付けてしまったとしたら、校長はどうするつもりだろう。そんな、誰かに迷惑のかかりそうな危険な賭けは、したくない。喋らないリーマスをじっと見ていた少女が、ゆっくりと口を開いた。
「君は私が学生であることに驚いているし、同時に不安に思っているだろう」
にこやかに笑いながら彼女は続ける。
「しかし、私は家名に掛けて、失敗などしないと誓うよ。それとも、私の言うことは信じられないかな?」
目があってしまえば、もう逸らすことなど出来なかった。不思議な光に吸い込まれるように、リーマスは力を失う。気付いたらこくり、と頷いていた。
 「良かった」
にこりと細められた眸が、まるで希望のようだった。


きぼうのひかり


















prev / next

ブラウザバックor戻る
ALICE+