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 ちょっと用事を頼まれてお遣いに出たらチンピラの抗争に巻き込まれた。何を言っているのか分からないと思うが読んでそのままだ。というかこの街にこんなチンピラがまだいたとは。運悪くそこに居合わせた僕は他の人間と一緒に大人しく人質になっていた。僕には特別縄抜けだとか体術の心得があるだとかそういうことはないので、このチンピラたちがことが済んだら素直に解放してくれるのを願うばかりだ。
 と、そんなことを考えていたら明り取りの隙間がカタリ、と音を立てた。チンピラたちは別の部屋にいる。此処には見張りもいない。不安がる他の人質たちに多分大丈夫です、と言って一応僕が明り取りの前に移動した。縛られているのが手だけで良かった。
 少しの間格闘していた明り取りはゆっくりと開いて、ひょこり、と見知った顔が出てくる。
「尾形さん」
「センセー、やっぱり此処にいたか」
「………」
いなかったらどうするつもりだったのだろう、と思ったが何も言わずにおく。
 この建物の明り取りが大きくて助かった、と言うべきなのだろうか。尾形さんが入ってきて伸びをする。つくづくこの人行動範囲が可笑しいんだよなあ、と思う。
「外、どうなってますか?」
「死体の山まで秒読みってところだろうな」
そりゃあ随分悪いらしい。
 尾形さんは他の人質の人の縄も解いてくれた。さて、此処からどうするか。
「出口には誰もいなかった。見張りはいるのか」
「一応隣の部屋に一人は確実ですね。他は知りません」
「じゃあ先行する」
「先行するって」
「他の奴らはアンタがまとめて連れて来い」
「ええ…」
「安心しろ」
その次に続いたのはアンタなら出来る、というような言葉ではなかった。
「アンタの分は残しておいてやる」
「いや、僕の分って何ですか」
「したいだろう? 治療」
 一瞬、僕は止まって。
「ははっ! サイコーに頭可笑しいんですね! 尾形さん」
思い切り笑った。尾形さんはお前に言われたくないというような顔をしてみせた。病院で対峙している時であれば兎も角、こんな一般人だらけの場所で兵隊さんがそう分かりやすい行動をとる訳がないので、きっとこれはしてみせてくれた、のだろう。わざわざご苦労様、と思う。僕にとってはなかなか見ていて面白いものだし、僕と尾形さんの遣り取りを見ている他の人々にとっては安心を与えるかもしれないけれど、尾形さんからしてみたら特に利点もないはずだ。無駄な動作。もしかしたらそう言った無駄を好む人なのかもしれなかったが。二ヶ月以上の付き合いはあるものの、そこまで尾形さんのことを知っている訳でもないのでこれ以上は何にも基づかない思考になってしまう。それはただの勘とかそういうもので、経験則などから導き出したものであるなら兎も角、何の根拠もないものはただの超自然だ。別段そういったものを否定することはしないが、科学に依って人間の治療を担っている医者がそうホイホイと信じるべきではない。
 特に、患者の前では。
「行けますか?」
僕が他の人々に問うと彼らは緊張した面持ちで頷いた。


















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