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あのチンピラの男は処置が終わってすぐ担いで外へと連れ出し、集まっていた別の兵隊さんに今すぐ病院へ連れて行けと渡した。処置もちゃんと出来ていたらしく、片足は失ったもののそこそこ元気にしているらしい。あの時素早く判断してくれた医者と兵隊の二人組には感謝してもしきれない、これから大変だろうが折角助かった生命、大切にしていこうと思っている。もうチンピラとしては生きていけないだろうし、どうせなら誰かの役に立つことが少しでも出来たら―――という、虚児院長がお節介にも、いや、ご親切にも男が運ばれた病院の医者に聞いてくれた報告を僕は聞いているのだった。いやあ、そうして聞くとなんだかいい話のように聞こえる。本当、そうして聞くと。なので僕は素知らぬ顔をしてこう答えた。
「へえ、それは良かったですねえ」
「伊佐早先生?」
にっこり。
当たり前だが失敗した。これは怒っている時の顔である。
「………僕は、医者の本分を全うしただけです」
「そりゃあそうだろうね。でも私が怒っているのは違う理由だと分かっているでしょう」
「………………………はい」
「えらく長い間が空きましたが、まあよしとします」
学生時代の君は頑として頷きませんでしたからね、と若気の至りを指摘されると逃げ出したくなる。
「医者とて、危険な場所へと行かねなならない時もあるでしょう」
「はい」
「私たちはそれを覚悟してこの道を歩むことを決めたはずです。ですが、それは今じゃない」
「…はい」
「君の行動は結果的に人命を救いましたが、やはり結果として尾形上等兵殿を巻き込む形になっている」
「はい」
「以上二点において、私はとても怒っているんですよ」
「………分かっている、つもりです」
虚児院長は人命を救ったことを責めはしない。何故ならそれは医者として正しい行いだから。例えばこれが戦争だったら捕虜の生命だって隔てなく救うように、外に言う言葉としてでも医者は人間の生命に貴濺はない≠ニ言う。
「それが言えただけで今回は及第点としましょう」
虚児院長はため息を吐いた。
「ですが、次はありませんからね」
「…心に留めておきます」
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