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 職場が変わったと言っても結局今までの長屋に住んでいたし、短期間だと思っていたちょっとばかり早起きを義務付けられたことが、もう少し伸びただけのような気もする。元々客員の体で来ていたのだし、傍目からは何も変わらなかっただろうと思う。実際数週間経ってから初めて、今まで正式な所属じゃなかったのか、などと言われたこともある。意外と僕の周りはそんなものだった。
 そんな中で、呼び出しを食らった。
 というと恐らく誤解を招くだろう。別に新人をいびろうというものではない。そもそも新人というには既に時期が過ぎていたと思うしこちとら既にいい年であるし、院長と知り合いであることもおおっぴらにはしていない。自分で言うのも何だが結構人当たりの良い方だとは思うし、なかなか厄介ごとに巻き込まれることはない。現在厄介ごとの真っ只中にいるという突っ込みには耳を塞ごう。では、何なのか。
 何を隠そう―――色恋沙汰である。

 手紙は無記名だったが同僚の文字など大抵覚えているものだ。他人のカルテを読むことはよくあるし、自然と覚えてしまう類のものである。だから行く前に断ることも出来た。本人を呼び止めて、指定されている日時は都合が悪くて行けない、という言うだけで良い。それは分かっていたけれども、結局少しだけ悩んで行くことにした。用事はなかったし、行動を起こそうとしたことに対して報いようと思ったのだ。場所もそこまでひと気のない場所ということでもないし、そもそも院内であるし。そういえば今日彼は当直だったな、と思い出す。なるほど、その時間を利用しようというのか。悪くない考えだ。もしも勤務中、患者に向き合わずに時間を使えと言われていたらすぐさま断っていただろう。
 扉の開く音がして部屋に誰かが入ってきたので手紙を鞄へと仕舞う。どうやら別段怪しい行動のようには映らなかったらしい。安心する。
 患者さんについての話を始めると、手紙によって一瞬齎された緊張感のようなものは徐々に薄れていった。
 そうして一日の業務を終え、先に済ませておこうと思って帰り支度をしているとそういえば、と同僚に話し掛けられる。
「今日は兵隊さん来てないんですね」
「え? ああ、そういえば…」
「そういえばって。伊佐早先生のご友人でしょう」
「友人、という訳では」
「あれ、違うんですか」
その言葉に笑ってしまいそうになって慌てて堪える。
 友人、まさか。それはあり得ない。
「違いますよ」
「ええー、そうなんですか?」
「そうですよ」
「じゃあ何であの兵隊さん、毎日顔出すんです?」
そうだった。
 毎日は来られないとか言っていたくせに、結局殆ど毎日顔を出している。日が空く時は顔を出せない日数を言っていくくらいだった。兵隊さんなんだから緊急の用事だってあるだろうし、そもそも僕は尾形さんに病院に顔を出してくれと頼んだ覚えはない。
「さあ…趣味、ですかね?」
「あの兵隊さんの方は友人だと思ってるとかじゃないですか?」
「まさかあ」
「伊佐早先生友人多そうなのに、あの兵隊さんに関してだと頑なですよね」
「そりゃあよく分かりませんからねえ…」
でも、恐らく。
 こういったあまり人に聞かせるべきでない話をする時には、どうせ現れるのだろう。


















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