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追い出されるようにして尾形さんの病室にお見舞いに行くと、尾形さんが目をぱっちりと開いてこちらを見ていた。無言の圧力が凄い。回診に来るだろう白栖先生にもこんなように接しているのだろうか。僕は仮にも友人と思われている―――そう、思われているだけなのであるがそれがもう周囲の認識なので仕方がない―――のだし、そうだったら尾形さんを叱るべきなのだろうか。友人は多い方だとは思うが大体が同じ分野を志す人間であるし、尾形さんのように兵隊さんである友人は残念ながらいないのだった。尾形さんを友人と言ってしまうのであれば初めての兵隊さんの友人となる。友人ではないけれど。ないけれど。大事なことなので二回言いました。
「いや、銃とか。ある訳ないじゃないですか。此処病院ですよ」
銃が触りたい、なんて何を言い出すのか。いや。言ってはいないけれど。触っていないと腕がなまる、と尾形さんは言った。言ってはいないけれど。一体本当に、何を言っているのか。言ってはいないけれど。
「あの、貴方重傷人の自覚あります?」
この間まで死に掛けていたのだ。今だって無理に身体を動かせば後遺症やら何やら残るかもしれない。折角腕だって綺麗に折れていたのに。
「ていうかもう腕、動かせるんですか? 痛みは? え? ない? どういうことですか?」
「伊佐早先生?」
「いやだからだめですってば! 起き上がろうとしない! 寝る! あ、白栖先生回診ですか」
尾形さんをベッドに詰め直していると白栖先生がやってきた。白栖先生は僕と尾形さんを見比べて、それから尾形さんまだ起き上がったらだめですよ、と言う。
「でも、また、何で」
「何か、銃触ってないと腕が鈍るとか」
「あー…分からなくはないですけどね、今は絶対安静ですよ」
「ほら! 言ったじゃないですか! 白栖先生は尾形さんの主治医なんですからちゃんと聞きますよね? …は? 嫌だからどうにかしてくれとか何言ってんですか、僕の話聞いてました? 貴方死にかけたんですよ。重傷人の自覚持ってください」
僕が尾形さんをなんとかベッドに押し込み直し、では、仕事に戻ります! と僕は逃げ出した。尾形さんだって白栖先生にゴリ押しすることはないだろう。うん。
そうして逃げてきた休憩室で、戻ってきた白栖先生は聞きたいことがあるんですが、と前置きして僕に向き直った。
「伊佐早先生、尾形さんの言いたいこと分かるんですか」
「流石に…目が雄弁すぎて…」
僕は素直にそう言って、あれ、と白栖先生を見上げる。白栖先生はそうかあ、とのんびりとした口調で頷く。
「いやあ、僕には分からないから」
「えっ」
あんなに、雄弁なのに?
仲良しなんですね、と白栖先生ににこにこと言われてしまえば、僕は流石に否定の言葉を持たなかった。
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