御依頼時は是非計画的に


 場所は道場から隣接した伊澄邸に移る。
 その中のやけに広い居間には、やけに光沢のある卓、やけに座り心地の良さそうな椅子が並べられていた。その他の装飾品のどれもこれもやけに高級感漂うものばかり……おい、この婆さんの経済力はどうなっている。
 毎回のことであるが、このような『THE・豪邸』なお宅に通されると思わず気後れしてしまう柴と薊だったが……全然自宅である伊澄家の婆孫、一週間過ごした静姫、そして静姫の解放にしか頭にないチヒロは全く動じることなく、普通に座った。
 他の三人はともかく、チヒロが平然としていることに大人二人は「見なよ…オレ達のチヒロくんを…」みたいな気持ちになった。

「もう十分でしょう」

 そんなまさに『神童』と言わざるを得ないチヒロが最初に口を開いた。
 
「シズは返してもらいます」
「いぃ〜わよぉ〜?」
「えっ?よっしゃあ」
「ばいばいだ」
「めっちゃあっさり」
「というかねっとり」

 チヒロが四十万静姫返却要請を唱えると、なんと想定よりも簡単に了承を得られてしまった。
 静姫は意外そうでありながらも小さくガッツポーズを取っているが、伊澄沙華という人間をよく知る柴と薊はまだ訝しげだ。
 この婆さんが一週間も引き延ばしておいて「はい、ではお返します」と言うはずがない……どことなく、含みのある物言いをしていることからチヒロもそれを感じ取った。
 
「だって十分『愉しんだ』からねぇ〜?」
「……っ」
「語弊のある言い方やめませんか沙華さん」

 ほぉ〜ら、煽ってきた。
 チヒロの眉間に深い谷が刻まれるのを見た静姫が、ストップをかけるように手を挙げる。
 
「じゃあ、どういう意味なの」
「えっ」

 しかし、チヒロはその静姫にも詰め寄る。
 何故なら、伊澄沙華という人物はどう考えても語弊ではない『やらかし』しかなさそうだからだ。
 静姫がこのピンクを庇うのは納得いかない……被害者だろ、多分だけど。
 
「語弊なく言ったらどう説明つくの」
「や、普通に鍛錬してたけど」
「それは無理があるよ、シズ」
「あっうん、確かに普通というよりお試し期間みたいな感じではあったけど」
「目下の問題はそこではないんだよ、シズ」

 まず最初に、明らかに鍛錬に必要ではなさそうなこの衣装について聞きたい。問題は山積みだが、嫌でも目についてしまうこのボリューム感たっぷりの衣装があまりにもノイズだ。

「その、なに?お姫様みたいなドレスは、」
「やめてプリンセスやめて本当に勘弁して」
「いや精神的ダメージとか今は知らないけど、明らかに着用する必要性感じないよ。剣術習いに来たんじゃないの」
「うー……」

 チヒロとしてもあまり目にすることはない貴重な静姫のスカート姿。正直に言うと、彼も静姫のゴスロリ姿を一目見た瞬間、どきりと胸が高鳴った。
 しかし、明らかに伊澄沙華の着せ替え人形状態という事実ということを思い出し、すぐに着替えて欲しくもなった。
 それに、その衣装を手がけたのが羅幻だということも気に入らない……先を越されてしまった、と思ったのだ。

「チヒロくん」
「……何ですか」

 どう説明したものか、と目を閉じ難しそうな顔をして困っている静姫に助け舟を出したのは……意外や意外、伊澄羅幻(5歳と144ヶ月)であった。

「話の横入りしてごめん。でも、チヒロくんは大きな思い違いをしてる」
「……どういうことですか」

 出会って数十分程で人を計れるようなものではないが……羅幻のその真剣な表情に『らしくない』とチヒロは思った。
 
「シズちゃんにはその衣装を着てもらう必要があったんだんだ」
「……」

 だからこそ、チヒロは彼の言葉に耳を傾けた。この派手な格好をすることに何か意味があるのか、と。
 そして、羅幻はそんなチヒロの目をまっすぐ見つめ直す……自身の真剣な思いを伝えるようにグッと拳に力を入れながら、次の言葉を続ける。

「だってロリィタと日本刀の組み合わせは無限の可能性を秘めてるじゃん!最高に可愛くて格好良くて見ているだけでも楽しくて」
「すみません趣味の話はしてないです」
「違うよ!」
「何が違うっていうんですか」
「趣味の話をしてるんだよ!」
「何が違うっていうんですか」

 真剣に話を聞こうとする自分が馬鹿だった、とチヒロはゲンナリした表情になる。
 この五歳児はどうやら話が通じないらしい。フォローを頼むために目を静姫に向けると彼女は額を抑えていた。あちゃあ。

「羅幻さぁ……」
「シズちゃん!趣味の話だよねっ!」
「いや、まあ、趣味の話なんだけど」
「助けてください、柴さんか薊さん」
「待ってチヒロくん失望しないで!説明させて!」

 ブルータス、お前もか。まさか静姫まで話が通じないと状態は思わなかったチヒロは子供陣営に何かを期待する事をやめた。沙華に至っては手を叩きながらケラケラと笑うばかりだ。

「あんなぁ羅幻……」
「ッ!待て柴!」
「?」

 チヒロに助けを求められた柴は苦言を呈そうと口を開いたが、横にいた薊が危機迫る表情でそれを待ったをかける……まさに、柴の目の前に脅威が襲いかかって来ているとでも言いたげな様子だ。
 意外な薊の行動にチヒロが小首を傾げる、と。

 パァアンッ!!

 ……たったの一度。一度、沙華が一際大きく手を叩いた、猫騙しのように。
 しかし、その音を耳入れた柴はそのままザフッと机に堕ち、沈黙する。顔を青くした薊が柴の頬を軽く叩くが、柴は白目を剥いたまま何も言わない……完全に気絶していたのだ。
 薊は「遅かったか……」と無念の言葉を呟きながら丁寧に指で柴の瞼を閉じさせる。おめめ乾いちゃうからね。

「……無粋ねえ」

 その場にいた誰もが戦慄した。いや、羅幻だけは「婆ちゃんすげーっ!」とはしゃいでいたが。
 驚くべきところは、意識を飛ばしていたのが柴のみだったということ。
 それを意味するのは、沙華はただ手を叩いただけで、的確にターゲットのみを……それが例え、妖術師の天井に手をつける男だとしても飛ばすことができる、という確かな実力。

「さっきシズが『説明させて』って言っていたじゃない。女の話ぐらい黙って聞けないのかしら、このジャガイモは……ねえ茄子?」
「あの、も、申し訳ありません沙華様。こちらのジャガイモにはよく言い聞かせておきますので、その手は収めて頂けると茄子は恐悦至極に御座います」
「次があった時は収穫して肉じゃがにしちゃおうかしら」
「婆ちゃんっ!シズちゃんとチヒロくん怖がってるよ!」
「恐怖を乗り越えた数だけ人は強くなれるのよ」
「そっか!」
「……じゃあ、説明するねチヒロくん」
「……うん」

 柴と薊が先程から腰を低くしている理由の全てを、チヒロは理解できたような気がした。

 *

「この格好は私の鍛錬じゃなくて、正確に言えば羅幻の妖術鍛錬の結果なんだよ」
「羅幻さんの……?」
「そう」

 静姫がチヒロに説明した内容はこうだった。
 沙華は弟子を取るような真似はしないが、世話を焼くという体で静姫の剣術を見ていてくれたのだとか。
 それは度々、柴に送られてきた木刀を振る静姫の写真から窺えたことだが……それと同時に沙華は羅幻のことも鍛えているらしい。
 それ自体に何も不思議なことはないだろう。羅幻は神奈備所属の妖術師なのだから実力も経験も培っていかなければならない……沙華にとって大切な孫だからこそ、強くなってほしいということなのだとか。
 
「それはそうとして、衣装を作ることと妖術鍛錬の関係がよく分かんないんだけど……」
「その辺は実際に見せた方が話が早いわね……羅幻」
「俺のやつ全部持ってきていい?」
「いいんじゃない?何着か選ばせようと思っていたし」
「はーいっ」

 羅幻は元気よく返事をしたかと思えば、その場で指を自由に曲げたり伸ばしたりを始める。
 何故、羅幻が手遊びのような事を始めたのか……チヒロには謎でしかなかったが、羅幻の妖術を知っている他の三人は彼が何をしているのか分かっているようだった。
 しばらく待っていると、廊下からトストストス、ガラガラガラ……という音が響いてきた。どうやら、ナニカが居間に近づいてきているようだ。

「……何?」
「みたらしだよ」
「は?」

 チヒロの脳内に一瞬『おはぎ』が浮かんだことは秘密だ。
 そのナニカ……もとい、みたらしは居間の前に到着したらしい。それと同時に羅幻も指を動かすのをやめた。
 なんとなくだが、気配からして随分と上背のありそうな雰囲気である。そのみたらしは、扉をノックし始めたようだったがその音は一般的なコンコン、という音ではなくポスポスという弱々しいものだ。

「いや、なんでみたらし呼んだ。みたらし扉開けらんないじゃん、おててがふわふわで指ないんだから」
「だってみたらしかわいいんだもん」
「まあ、かわいいけどさ、ノックさせる意味とは」
「マナーは大切かなって!」
「うちの羅幻は教育が行き届いてて素晴らしいわぁ〜!誰が育てたのかしら!」
「まわりくどい自我自賛はいいんで、みたらし部屋に入れてあげてくださいよ」
 
 みたらし、と呼ばれる存在が「キュゥ〜!」と鳴きながらすりすりと扉に擦り寄っている音が聞こえてきた。助けを求めているらしい。なんだろうか、なんか、不覚にも可愛いと思ってしまったチヒロがいた。

「待たせてごめん!今開けるからね、みたらし!」
「キュゥウ〜!」

 羅幻はいそいそと扉に駆け寄り、それをがちゃりと開く。静姫はその姿をしらーっとした目で眺めていた。
 そして扉の先からぬぅっと出てきた、みたらしの姿とは……。

「……くま?」
「そうっ!くまさんぬいぐるみのみたらし!」
「羅幻の妖術によって自立歩行可能、体長200センチ、ふわふわブラウンのみたらし」

 そのみたらしは羅幻と熱烈なハグを交わしては「キュウ!」っと鳴いていた。廊下で待たされていた間、相当心細かったらしい。
 しかし、かと思えば次はとすとすとすと静姫に駆け寄り始める。静姫に覆被り始めるみたらしだったが、彼女はえらく苛ついた様子でそのみたらしの顔を反射的に片手で押し退ける……結構強めに。

「キュゥウ〜!?」
「うざい、でかい、離れて」
「えっシズちゃんなんで!?なんでこんなに可愛いみたらし拒否するの!?」
「いや、ガワはね。ガワは可愛いけど、中身は実質羅幻じゃん」
「じゃあ、可愛いじゃん!」
「黙れ!お前はいつまでも五歳でいれると思うなよ、なんで今も五歳なんだお前は!」
「そんな!ときどきは十七歳になれるよ俺!」
「本来常時十七歳だろハゲ!」
「ハゲじゃないもん!刈り上げだもん!」

 わいぎゃいほのぼの言い争いを始めた静姫と羅幻……そして、説明を求めたはずなのにそんな妙に仲良し感のある二人を見せつけられて苛々が止まらないチヒロ。それを口元に手を添えながらニヨニヨと微笑む沙華、柴に置いていかれ胃痛が止まらない薊。柴、頼むから起きてくれ、今すぐに。

「……ねえ、説明は?」
「そうだよ羅幻みたらし下げて。自立オフにだって出来るでしょ」
「え、でも……みたらしは生まれたてて感情について学ばせることとかまだ終わってなくて」
「うるせえみたらしの可愛い鼻千切って恐怖植えつけんぞ」
「みたらしぃいいいっ!ちょっと下がろうね!」
 
 卑劣な静姫の脅しに羅幻は泣きながら再度、手遊びのように指を動かした。すると、静姫に抱きつこうとしていたみたらしは心無しか寂しそうに廊下に戻り、何かを引きずって再び居間へ。
 これが先ほどの『ガラガラガラ』の音の正体のようだが……。

「それ、さっきの……」
「うわっ本当に全部じゃん!」

 それは、道場に置いていた大量の衣装を掛けておいたキャスター付きのハンガーラックだった。改めて見てもとんでもない量である。しかし、よく見るとふわふわのスカートが多いような……それを愕然として見ていた静姫がぼそりと「マジだったんだ……」と呟く。

「よくもこんなに集めましたね」
「あー、集め……うん、まあ、うん……」
「……?どうしたのシズ」
「うーん……」

 えらく歯切れの悪い様子の静姫は珍しい。いつもはハッキリキッパリ切り込んで行くような話し方をするというのに、今の彼女はまるで何年も研いでない包丁のように切れ味が悪い。
 頬をぽりぽりと掻きながら気まずそうな表情をしている静姫に対して沙華は溜め息を吐き、口を開いた。

「シズ」
「……うす」
「説明するって言ったのは誰かしら」
「……自分です」
「このままじゃ死んだ柴が浮かばれないわよ」
「うす。師範の死は無駄にしません」
「不殺掲げてませんでしたっけ」
「か、勝手に、殺すな、や……」
「しっ柴……!起きたぞ柴が!」

 ようやく意識を取り戻し「ウオッ!?なんやでっかわくまさんおるやんけ!?」と驚く師範をよそに、静姫はチヒロへの説明を再開する。

「チヒロくん……実は、羅幻の作ったこのゴスロリなんだけどさ……」
「うん」
「これだけじゃないんだよね」
「うん?」
「あのラックに掛かってる衣装は全てメイドインラゲン」
「……うん?」
「羅幻は私が伊澄家で過ごした一週間であの衣装を全部作ったの」
「正直、死ぬかと思った!」
「羅幻が妖術酷使して鼻血出した時、人って鼻からあんなに血が出るんだってビビったよ私はさ」

 タハハーッと頭をかきながら笑う羅幻を心底奇怪な生き物を見るような視線を向ける静姫。チヒロはそんな彼女の視線の意味がよく分かった。おそらく自分も羅幻に対して同じような視線を向けているだろうに違いない。
 チヒロには人の手で衣装を作る際、どれほどの時間がかかるのか全く予想ができない。しかし、素人目に見ても今の静姫が着用しているものが一週間程度で出来るものではないのでは、ということが容易に想像できた。
 だというのにも関わらず……あのラックに掛かっている衣装たちはこのゴスロリと同じくらいボリューミーなものが沢山掛かっている。ざっと数えても二十着以上あるのではなかろうか……え、なに?妖怪……?

「なんでこんな化け物が存在するんですか、沙華さん……」
「ヒント、私の孫」
「それほぼもう答えですよね……」

 羅幻の妖術はざっくり説明すると、彼が玄力を込めた人形を操作するというものだ。人形であれば操作可能ではあるものの、術者本人が一から作り上げた人形が一番玄力を巡らせやすく、他の要素も付与することが可能らしい。それが先ほどのみたらしなのだろう……あのみたらしも彼の手作りの人形である。羅幻の趣味は裁縫なのだとか。
 羅幻は伊澄家にストックしていた既製品の木製のマネキンを三十体ほどを同時に操作し、並行作業でこの大量の衣装を作り上げたらしい。
 静姫も羅幻が多くの衣装を作ったとは聞いていた。しかし、そのどれもが職人が手掛けた既製品のように見えたため、流石に全てではないとは思っていたのだが……なんか、全部だった。ヴィンテージ以外。

「つまり、衣装作りという超精密作業を、玄力を込めにくい木偶人形を同時に操作しながら、一週間でこのエグい数を完成させたってこと」
「正確に言うなら五日!昨日は一日中泥のように寝たし、今日が七日目だからね!」
「それは、うん……鍛錬なんだろうね……」

 そして何故、羅幻がその超ハードワークをする羽目になったかというと。
 当初、沙華が静姫の所有している服が全て年頃の乙女には、ちょっと……あんまりなものしかないことを聞き、鍛錬にもなるだろうからということで羅幻に彼女の服を作らせようと決めたらしい。
 静姫としても、正直に言うともう少し余所行きの服が欲しかったところでもある。
今までは絶対に外出することはなかったから気にも留めなかった。しかし、これからは頻繁ではないかもしれないが、それでも六平家から出る機会はあるだろう、と。
 そして、服を作る前に羅幻は静姫にどのようなデザインが良いか、と聞いた。着るのは静姫なのだから、彼女の希望通りのものを作るべきだろうと考えるのは当然である。しかし、静姫はそれまでnotお洒落な生活を送ってきたので、羅幻に差し出されたカタログを見てもよく分からなかったのである。
 それ故か、静姫は羅幻に「羅幻の好きなように、お任せで」と言ってしまったのだ。

「そしたら羅幻くんったらもう、本当に好きなようにしちゃった……」
「つまり誤発注ってことじゃん」
「だってこんなことになるとは」
 
 静姫は自分でもお任せ、だなんて注文は良くなかったかな、と一瞬後悔したものの……羅幻があまりにも目を輝かせては「お任せあれ!」とドーン!と胸を叩いて作業に取り掛かった。だから「まあ、いいか」と悠長に構えてしまったのだ。その結果がこれである。

「全衣装完成時の羅幻のゾンビ顔がマジで忘れられない……」
「まあ、そんな私の愛孫の頑張りを無碍にすることは許せないってことで、シズには責任とって全て強制着用させたってわけね」
「責任取らせていただきました……」
「でも、いっぱいロリィタ作れて俺楽しかったよ!シズちゃん!どれ、どのロリィタが一番好きだった?」
「……軍服」
「シックな感じね!」

 静姫はペッカペカの羅幻の光輝く笑顔を前に、思わず両手で顔を覆ってしまった……罪悪感がすごい。すまんがその笑顔をしまってくれんか。わしには強すぎる。眩しすぎて。
 まあ、結論として……。

「つまり、このゴスロリは羅幻の趣味の話ってことなんだ、チヒロくん……」
「広く捉えればそうだけど、広く捉えすぎじゃないかな」
「羅幻の中では全然焦点の話だからさ……」

 チヒロはため息を吐いてしまう。なんだかとても疲れた。もっと沢山いろんな話を聞きたかったのだが、既にお腹いっぱいである……もうさっさと静姫を連れて六平家に帰るべきだろうか。うん、そうしよう。

「……とりあえず、俺達はこれでお暇させて頂きますね」
「シズちゃん、どれ持って帰る?」
「え……うーん、ちょっと考えさせて」
「まあ、それは荷造りしながらでも決めればいいわよ。シズの荷物は離れに置いてあるから……」

 沙華はそう言いながらハンガーラックを引きつつ、離れの場所を親指で差し、これでもかというほどの笑顔でこう言い放った。

「これからシズは離れに監禁ね」
「脈絡がないにも程があるが」
「本当に返す気あるんですか」

 どうやら、六平家帰還にはもう少し時間が掛かるらしい。