一護はありったけの力を振り絞って尾を引っ張り、萌苗を自身の元へ引き寄せた。そして目の前まで萌苗が近付くと同時に、斬魄刀を萌苗の身体に斬り込んだ。
だが、萌苗の身体には傷一つ付いていなかった。彼女の身体は予想より遥かに堅い鋼皮を纏っていたのだ。
『ふっ。今の私の鋼皮はどの破面のそれより堅いの。ただ斬るだけの攻撃なんか効かないの、よっ!』
ゴッと鈍い音を発て萌苗の拳が双天帰盾を割り、一護の腹部にめり込んだ。息を詰まらせた一護はそのまま仰向けに倒れこみ、その上に身動きが取れないように萌苗は跨ぎ乗る。
「…萌苗…」
『そんなに萌苗が良いなら、萌苗の姿で留めを刺してあげる』
そう言うと、萌苗は空中に手を翳す。
すると徐々に萌苗は人の姿に戻り、それに比例して手の中で剣の形が形成されていき、完全に姿が戻った頃には、剣の切っ先が一護の喉元に軽く触れていた。
口に緩く弧を浮かばせる萌苗に対して、一護は悲しみを含んだ瞳で萌苗を見る。そんな対照的な二人に対して雰囲気はピリピリと険しく、第三者が入る余地は無い。
「…萌苗、お前はこれで良いのかよ…!コイツに乗っ取られたままで良いのかよ!」
「現実から逃げんな!俺に言いたい事があるならちゃんと言ってくれ!今まで言えなかった事も、全部、ちゃんとお前の言葉に応える!!俺に出来る事なら何でもする!!!」
「は!何言ってんの。アンタの言葉なんかあの子にはもう聞こえてな…っ?」
途端、萌苗の身体がぐらりと傾いた。そのまま剣を持った手で顔を押さえると、身体を前に倒して俯いてしまった。
「く…そ……っ!」
「日下部さん!」
「萌苗ちゃん…」
「萌苗!」
「……よ」
「?」
「今更な事…言わないでよ!」
次の瞬間、ガキンッ!と大きな音を立て、一護の顔の傍ギリギリに萌苗の剣が突き刺さる。血の気が引いたのを感じながら、一護は萌苗を見る。
顔を上げた萌苗の瞳には白さが戻っているが、反面、怒りで顔を赤く染めていた。
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