「…やっぱり寝言にしか聞こえねぇな」
「感じないのも無理は無い。私も崩玉が意志を持つことは、崩玉の主となることで初めて知った」
「君は、崩玉の能力とは何だと思っている?
相反する二つのもの―――虚と死神との境界を支配するものだと?」
「違う」
「"崩玉の真の能力"とは、自らの周囲に在るものの、心を取り込み具現化する能力だ」
「…何…!?」
「解らないか?今迄黒崎一護の、朽木ルキアの、浦原喜助の周りで起きた奇跡と呼ぶ全てが、崩玉の意志によって具現化されたものだと言っているんだ」
「何を言って………」
「崩玉の能力は、虚と死神の境界を操るものだと浦原喜助が誤認したのは、崩玉を創った彼自身の願いがそれだったからだ」
「朽木ルキアの霊力が黒崎一護に全て渡り、彼女が死神の力を失ったのは、志波海燕を殺した苦痛から彼女が救われていなかったからだ」
「茶渡康虎が、井上織姫が特異な力を呼び起こされたのは、彼等自身の無力を彼等が心の底から呪ったからだ」
「日下部萌苗が破面の力を得て私の元に来たのは、自分が無力だから愛していた人物に裏切られたと絶望したからだ」
「私は、崩玉の真の力に気付いていた」
確信を持って話す藍染に、一心は言葉も出なかった。
その言葉が真実なのかそうでないのか、実際に起こった事を照らし合わされても、分からないのが本音だった。
「いや、気付いていたと言うと語弊があるな。正確には、浦原喜助の言う「虚と死神の境界を操る能力」ではないという事を知っていた。何故なら、その能力が本当ならば、平子真子達が完全な"仮面の軍勢"と成り果てる事など無かった筈だからだ。平子真子達の虚化は虚化そのものの実験であると同時に、崩玉の能力を確認する為のものだった」
「而してその実験は成功した。浦原喜助の手による崩玉の能力の発動によって、平子真子達は完全なる"仮面の軍勢"へと進化した。そして私は崩玉の能力の仮定を手に――――」
「朽木ルキアを、黒崎一護の元へと向かわせたのだ」
瞬間、一心の周りの時間が止まった。
言葉の真意が分からないままにも関わらず、藍染の言葉と現実に起こった事の辻褄が合っているような、全ての事が真実だと思ってしまうような錯覚に落ちたのだ。
「無論、崩玉の能力にも制限はある。崩玉の能力は周囲の心を具現化するもの。しかしそれは、対象が元来それを成し得る力を有していなければ達成される事は無い。そういう意味では"望む方向へ導く力"とも言える。…だが生きものというのは不思議でね。その矮小な心で願う程度の事は、実現できるようにできている」
「てめぇっ……」
怒りを込めて口を開いた一心だったが、途中で盛大な破壊音と共に建物が破壊された事によって、言葉は掻き消されてしまった。
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