「何を止まっている。早く入れ」
「……」


ウルキオラに促されるまま、織姫の部屋の扉をウルキオラより先に開けて入る。
ギイ…ィ という音が部屋に響き、私が入っても、織姫はこちらを向かない。

「――入るぞ」


次にウルキオラが中に入ると、織姫は何も言わず厳しい顔をしてウルキオラを睨む。ウルキオラはさほど気にする様子も無く、話をしながら織姫の元へ歩く。私は扉の近くで待機していた。

「…どうやら気付いたらしいな。ノイトラの馬鹿が逸ったらしい。自宮で待てと命が下っていたものを…」
「…茶渡くんは、死んでないよ」

織姫の言葉を聞こえなかったフリをしたウルキオラに、織姫は再度「死んでない」と力強く言う。それは、ウルキオラや私に言っているのか、それとも自身に言い聞かせて言っているのか…。真意は多分、本人にも分からないだろう。
結局は、ウルキオラは聞かぬフリをしたのだけど。

「入れ」

カラカラと音をたて、下っ端の破面はワゴンを押して部屋の中へ入ってきた

「食事だ。食え」
「………いりません」
「藍染様のお声が掛かるまで命を保つのもお前の務めだ。食え」

食事の準備をしているなか、ウルキオラが二度言っても織姫は食事をする気配は無い。それ以前に、織姫はその場から動こうともしなかった。

「俺が無理矢理捩じ込んでやろうか?それとも、縛り付けて栄養注入だけにして欲しいか」
「…茶渡くんは死んでない…」

尚もうわ言の様に繰り返すソレに、ウルキオラも少々苛立ってきたらしい。

「しつこいぞ。どちらでもいい、そんな事は。何と言って欲しいんだ 俺や萌苗に?「心配するな、きっと生きている」とでも?
下らん。俺達はお前をあやす為に此処に居る訳じゃない」
「ウルキオラ」

言い過ぎだ と口を挟もうと彼の名を呼んだら軽く睨まれた。が、すぐに織姫の方へ向き直った。

「…解らんな。何故そうまで生き死にに拘る?」

そう疑問を投げ掛けたと同時に、織姫は何を言っているんだ という顔でウルキオラを見る。ウルキオラは織姫を無視し、淡々とした口調で言葉を発し続けた。

「いずれにしろ、程無くお前の仲間は絶滅する。それが一人早まったから何だと言うんだ。こうなる事は最初から予測できた筈だ」
「…やめて…」
「できなかったとすれば、その責任は奴等の愚かさに在る。馬鹿な連中だと笑えば済む事だ。それが何故出来ない?俺なら、自分の力量も量れずに、この虚圏に乗り込んだ、奴等の愚眛に怒るがな」

言い終えた途端、その言葉がキッカケになったのか、織姫はウルキオラに走り寄り「パン」と小気味良い音をたて、勢い良く平手打ちをした。
しかし、ウルキオラは何も無かったかの様に織姫を見、織姫は息を軽く弾ませウルキオラを睨む。
双方は数秒睨み合ったが、先に踵を返して部屋を出ようとしたのはウルキオラの方だった。

「一時間後にもう一度来る。その時までに食っていなければ、縛り付けて捩じ込んでやるからそのつもりで居ろ。行くぞ萌苗」




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