「そうだよ。織姫のために一護は戦ってるのに、織姫がそうやって一護から眼を背けるなんて、駄目だよ」
「萌苗ちゃん…」
「一護が好きなら、ずっと一護と一緒に居たなら、一護の全部を見るべきじゃないの?それなのに見ないなんて、ずるいよ。」
「……織姫は、ずるい」
―嘘。本当は私の方がずるい。自分の事を棚に上げて、織姫を攻める私の方がずるい事くらい、分かってる。
でも、一護が私よりも織姫の事ばかり気に止めるから、私と織姫は違うんだって…もう私なんか要らないんだって言われているようで、つい攻めてしまいたくなる。だから…―
「今の一護には」
(今の私には)
「織姫の言葉しか、届かないんだよ」
(一護に声をかける勇気も、資格もない)
織姫の眼を真っ直ぐ見据え、萌苗は強く言い放った。しかし、表情は今にも泣きそうで、声も、耐えるように強く握っている拳も震えている。
萌苗の言葉を聞いた織姫は、自分を抱きしめる手の力を緩め、一護達の方へ急いで視線を向けた。その間に、織姫の思考が世話しなく動く。身体の動きは思考の動きとは逆に、とても遅く感じられた。
―そうだ。最初はただ、みんなを守りたくて虚圏へ来た。だけど助けに来たと聞かされて、心のどこかで喜んでしまった。仮面をつけた黒崎くんを見て、助けに来たのではないのかもしれないと思ってしまった。
ちがうのに、そんなことほんとは、ほんとはみんな どうだっていいはずなのに。
あたしは―――
固い壁の割れる音と共に、一護の身体は打ち付けられ、ガラガラと音をたてその場に崩れ落ちそうになる。
しかし、ゆっくりとグリムジョーが近付いてくる気配に息を荒げながら、完全に落ちるまいと足に力を入れ踏ん張る。
「…どうやら本当に限界らしいな…。…終わりだぜ、黒崎」
つまらなそうな眼で、グリムジョーが一護を見た。その時。
「死なないで!黒崎くん!!」
と織姫が大きく声を張り上げた。
驚いた一護が後ろを振り向くと、織姫が涙を溜めてこちらを見ていた。あまり声を張り上げる機会がないからか、少々息が荒い。
「…勝たなくていい…。頑張らなくていいから…。…もうこれ以上…ケガしないで……」
くしゃりと顔を歪ませる織姫を見て、織姫の本心を聞いて、一護は目を見開く。それと同タイミングで飛んできたグリムジョーの手を、気配のみで察知し受け止めながら。
「!」
「…悪りィなグリムジョー…。どうやら俺は……これ以上やられる訳にはいかねえらしい」
そう言ってグリムジョーを見た一護の顔は、今まで見た中で一番優しい顔をしていて……。
受け止められた事に驚いたグリムジョーの隙を突いて、一護は縦一閃に刃を降ろした。肩からはこれまでにない量の血が噴き出し、白眼を向いているグリムジョーを見て、気付かれないように小さく息を吐いた。
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