そんな一連のやりとりを終えた三人。
織姫とネルは一護に担がれ、抱えられて下に降りた。一護は先にネルを降ろし、次に織姫を降ろしてから、一息吐く。
「さて…と。とりあえず俺はこのままチャドとルキアを助けに行くから…」
「ネ…ネルたつは!?ネルたつは置いていくっスか!?」
「そんなワケねーだろ、ついて来いよ。こんなとこに居る方が危ねえ…」
「あの…!すごく今更なんだけど…」
おずおずと、織姫が声を上げた。それは前々から言いたかったんだという顔で、顔には少し焦りが見えた。
「なんだ?織姫」
「やっぱりさっきみたいなのって、萌苗ちゃんの前でやっちゃダメだと思う…んだ」
「!」
織姫の言葉に「あ、やべえ」と言う顔をした一護。ネルも今更気付いたという顔をする。と、その横を何事も無かったかのように、萌苗が通り過ぎていく。
一護は、弁明などが頭に浮かぶより早く萌苗の腕を掴んで、引き止めようとした。
「っ、待ってくれ、##na me1##」
「触らないで」
パシン!と乾いた音をたて、萌苗は一護の手を叩き落とした。萌苗から発せられた声はとても冷たく、表情はうつむいているため良く分からない。
更に、間を置いてから萌苗は同じ言葉を、もう一度一護に向かってゆっくりとした口調で放った。その時も、声色の冷たさは変わらなかったが。
「…触らないで」
織姫に触った手で、私に触らないで。
そうは、言えなかった。
織姫は大切な友達だ。仲間とまではいかないが、少しの間を一緒に過ごした人物に侮蔑の言葉は吐けない。それに何より、その台詞を発して一護に嫌われるのが怖いという、心の弱さが萌苗を押し留めた。
それと同時に、萌苗の心には怒りが流れてきていた。
「やっぱり、結局は織姫の方を取るんじゃない」
「ちがう、それは…!」
「織姫が人間で、私が破面だから!?
そうよね、一護が手なんか貸さなくても、私だったらあんな場所から簡単に降りれるもんね。私が…、破面だから……」
「萌苗… 」
「やっぱり、一護は私なんかどうでも良いんだよね。私がいくら一護の心配したって、一護は私に見向きなんかしなかった…。私に何も話してくれなかった。」
「一護は前に「心配だから言わなかった」って言ってたけど、そんなんじゃないよね。あれはとっさの言い訳でしょう?」
「っ、違う」
「違わないでしょう!…ねぇ。ずっと、私がどんな気持ちでいたか分かる?人が心配してるのに、軽くあしらわれたり、無視される気持ち。そうやって他の女の子ばっかり見てる一護を見てる私の気持ち。」
「一護になんか分かるわけないじゃない!」
萌苗は勢いよく顔を上げた。瞳には涙が溢れ、留まり切らない涙は頬を伝って地面に落ちていく。人前で泣くなんて情けないと思いながらも止まらないそれを、隠すように萌苗は俯き、袖で顔を覆う。
一護に、言葉は…想いは届いただろうか?
一方的な汚い想いだ。飽きられても嫌われても仕方がない。
でも、出来ることなら謝罪の一言くらいは入れてほしい。でも何も言わないで欲しい。
謝ってきつく抱きしめてくれるなら、さっきの事を赦しても良い。
でも謝ってほしくない。赦したくない。
…そんな我が儘で自分勝手な矛盾。
そんな矛盾を、彼は気付いてくれるだろうか?
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