「おかえり、織姫」

藍染に呼ばれた本人は、状況が分からずに驚いた表情で藍染達を見上げ続けている。

「どうした。随分と辛そうな顔をしているね」

一歩踏み出したと思っていたのに、いつの間にか藍染は織姫の手前に居た。藍染の手はゆっくりと織姫の顔に触れ、顔を近付け諭す。

「笑いなさい。太陽が陰ると皆が悲しむだろう。君は笑って、少しの間ここで待っているだけで良い。ただ、我々が空座町を、滅して来るまで」
「空座町を……滅す……?」
「そうだ。空座町を滅して、王鍵を創生する」

藍染の言葉と同時に、壁であるはずの部分が空座町の姿を映す。
驚き眼を見開いてその言葉を繰り返した織姫に、肯定の意を唱えながら、藍染は再度階段を登っていった。そして歩き続けギンと東仙を抜かした藍染は、東仙の名前を呼んだ。

「要、天挺空羅を」
「はい」

それを合図に、東仙は小さな六角形のピースを取り出し、放った。放たれた瞬間ピースの中心が光り、光線となって東仙の右腕に刺さると、模様を描きながら腕に絡み付く。手の先には、二重に描かれた四角が浮いていた。

「縛道の七十七。天挺空羅」

同じ空間に居るため、萌苗達にはそれが繋がったのか分からないが、東仙が藍染の期待に背く事はないから絶対に繋がっているだろう。

「聞こえるかい?侵入者諸君」

静かに、此処には居ない誰かに藍染は話す。それは第三者から見れば、奇妙な光景だった。

「ここまで十刃を陥落させた君達に、敬意を表し先んじて伝えよう。これより我々は、現世へと侵攻を開始する」

途端、藍染達の登っていった階段が、徐々に消えていく。織姫を逃さないためだろうか。分からないが、階段が消えてしまったため、下には織姫と萌苗の二人だけになった。途端に、萌苗は息苦しさを覚える。

「井上織姫は第五の塔に置いておく。助けたければ奪い返しに来るが良い」
「彼女は最早、用済みだ」

萌苗は、自分の耳を疑った。
織姫が、用済み…。何をなし得、藍染は織姫を用済みと称したのか、ずっと彼の傍に居た訳ではないので萌苗は彼の真意が分からなかった。
だが、彼女を消すチャンスだと、正直思ってしまった。

「彼女の能力は素晴らしい。"事象の拒絶"は人間に許された能力の領域を遥かに凌駕する力だ。尸魂界上層部はその能力の重要性を理解していた。だからこそ、彼女の拉致は尸魂界に危機感を抱かせ、現世ではなく尸魂界の守りを堅めさせる手段たり得た」
「そして彼女の存在は尸魂界の新規戦力となるであろう"死神代行"を含む"旅禍"を虚圏へとおびき寄せる"餌"となり、更にはそれに加勢した四人もの隊長を幽閉する事にも成功した」

そう藍染は話を続けながら、ゆっくりと空座町へと続く空間を歩き始めた。

「護廷十三隊の素晴らしきは、十三人の隊長全てが主要戦力たり得る力を有しているという事だ。だが今はその中から三人が離反し四人が幽閉。尸魂界の戦力は文字通り反撃したと言って言い」

「容易い」

「我々は空座町を滅し去り王鍵を創生し、尸魂界を攻め落とす。君達は、全てが終わった後でゆっくりとお相手しよう」

全てを話し終えると同時に、空座町に着いた藍染。しかし、目の前には藍染の見知った人物が既に待機していた。
下に居る萌苗には、その人物が誰だか分からないが、藍染が止まった気配だけは分かった。




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