失意の怒り
第二章 等価交換







「ロウちゃんは・・・冥界に帰りなよ」

「もう辛い思いなんてしなくて・・・いいんだよ・・・だから、ね?」

「私は・・・ロウちゃんと一緒に過ごせて・・・すごく・・・すごく、幸せだったから・・・」






半壊した盗賊のアジトの前で、ロウはレイラの最後の言葉を思い出していました


肩の筋肉がプルプル震えています

「感情」にもし体積があるのならばロウの頭は弾け飛んでいるでしょう

悲しみが 悔しさが 怒りが
ロウの体を叩きます



ロウは思いっきり息を吸い込み、咆哮を上げました



ゥオオォォオォォオオォォオオォン!!!!



バッシャアァァッッ!!と濁流のような、けたたましい轟音が一帯に響き渡りました


巨大な盗賊のアジトは一瞬にして四散し、そこには灰の山だけが残りました

同時にいくつかのタマシイと、たくさんのヌケガラが天に昇っていきました




泣きそうでした

胸が張り裂けそうでした


膝から崩れ落ちそうでした


そんな気持ちを「怒り」が奮い立たせました



許すまじ・・・盗賊団
絶対・・・絶対に!!





ロウは盗賊団の拠点を次々に潰して回りました

拠点に入るたびに怒りは増幅していきました

稀に無事な人々も発見されましたが、ロウは彼らを村に返すと、すぐに次の拠点を目指しました

そしてついに見つけたのです
盗賊団の頭の居所を



==

「いやぁ、大量大量! あの村、随分貯め込んでやがったなぁ、ガハハハ!」

石造りの砦の一角で、無精ひげの男がご機嫌で酒をあおっていました

「地主が村人のために国税を貯めてたそうですよ 泣かせるねぇ〜ケケケケ」

側近と思わしき男が笑いながら酒をつぎました

「ざまぁねぇなぁ んなことすりゃあ、余計国を煽るだけだっつーのに」

「まあ、おかげでコッチは堂々と強盗できるんですからねぇ ありがたいもんですよぉ、全く!」

「ああ これで、あいつらにも旨いもん食わせてやれそうだな・・・」

無精ひげの男が窓に目を向けていると、慌ただしく、一人の男が部屋に入ってきました

「かっ、頭ぁ!! 大変だ!! 西区と北区のアジトがっ・・・!!」

「・・・なんだと!?」





「・・・そいつは本当か!?たった一匹の獣人だとぉ!?」

「へぇ・・・信じられねぇことですが・・・あっしは見てきやした・・・」

「・・・」

「か、頭ぁ・・・どうしやす!? このままじゃぁ、いずれここも・・・」

「・・・てめぇらは主力部隊を連れて、『家』に戻れ 俺はここに残る」

「!?・・・頭・・・」

「あそこだけは死んでも守らなきゃなんねぇ・・・そいつの目的は多分俺だろう、俺が囮になる」

「頭・・・そんな・・・!!」

「『家』を守れよ、てめぇら・・・」

==


ロウは盗賊団の伝令役が入っていった拠点を見つけました
ここに盗賊団の頭がいるのでしょう

ゆっくりと歩を進めていきます


ロウが拠点に近づくと、一人の男が窓から顔をのぞかせました


「もしやとは思っていたが・・・やっぱりてめぇだったか、いつぞやのワン公!!」


ロウは身構えました
谷底の村が襲撃された際に頭取を勤めていた、あの無精ひげの男でした

男は窓から飛び降りました


ズドン!

辺り一帯に振動が響きました

舞い上がる土煙にロウが目を凝らすと、無精ひげの男の姿がみるみる変わり、金色の光沢を帯びた巨人へと変化したのです


黄金の外殻を持つ魔導魔族
ゴールドゴーレム


「あんときは不意打ちを食らったが・・・今度はそうはいかねぇぞ!!」

男の変化と同時に、ロウを取り囲むように十数人ほどの盗賊団が草むらから飛び出しました


「やっちまえ、てめぇらぁ!!」


男の掛け声と共に、盗賊団は銃撃を四方八方からロウに浴びせました


ドドドドドドドドッ!!
ビシャッ! バシャァッ!


発射されたのは液体
強酸弾です

石畳の地面はジュウゥと音を立てました

ロウが強酸の雨から身をかわしている間に、ゴーレムの豪腕が酸をものともせずロウに襲いかかりました


この時代において金を腐食させるものはありません
自らの肉体の理を生かした、極めて狡猾で有能な戦法でした


ガキィンッと激しい金属音が響きます
とても金とは思えない硬さです

酸の雨の中、拳をいなしたロウ
巨人の激しい追撃が大地を砕きました


なぜ罪もない人々を・・・
罪もない村を・・・
貴様ら・・・絶対に許さん!!



ゥオオォォォオオッッッ!!!



ロウの咆哮が響き渡ります

ボゴォッ!!バカァンッ!!

酸弾銃の銃身が弾け飛び、盗賊団の悲鳴が響き渡ります

同時にロウの渾身の拳がゴーレムの堅牢な外殻をブチ抜きました


ドゴォガォァンッッ!!


「かっ・・・はぁ・・・・・・!!」

ゴーレムの心臓部である核を握り締め、ロウは睨みつけました


女性たちにあんな非道いことを・・・
なぜあんな・・・何故・・・


ゴーレムも苦しそうに悶えながらもロウを睨みつけました

「たかだかガキどもの悪戯に・・・ハァハァ・・・わめいてんじゃ、ねぇよ」


イタズラ?
あれが・・・悪戯だとでも言いたいのか・・・?


「そうだよ、ガキどもに手頃なオモチャを与えてやっただけさ・・・それが・・・悪いか?」


ギリィイッ・・・!


ロウの拳に力が入ります
ゴーレムは苦痛に身をよじりました


苦しめ・・・苦しめ!!
お前が苦しめた人の分まで・・・

貴様のタマシイは
私が喰ってやる!!


「何馬鹿なこと行ってやがる・・・まぁいいさ・・・俺の・・・役目も・・・ここ・・・まで」

カッ!


・・・!!


突如ゴーレムが眩い閃光に包まれました


ボゴオォォォン!!


凄まじい衝撃がロウを襲います
巻き上がった土煙で視界が遮られました

ロウがあたりを確認すると、彼女を中心に巨大なクレーターが広がっていました

すぐそばにあった盗賊の拠点も跡形もなく吹き飛んでいます


ロウの足元にはゴーレムの胴体だけがスクラップのように転がっていました


・・・

やったよ・・・レイラ

終わったんだよ・・・



ロウの体からフッと力が抜けました



ポゥ・・・



足元から光が放たれました

視線を落とし、ロウは驚きました

ゴーレムの体から解き放たれたのは虹色のタマシイだったのです


えっ・・・?
なんで・・・!?



ロウが呆気にとられていると、後ろから彼女を呼ぶ声が聞こえました

それは、ここに来るまでに制圧していた拠点で幽閉されていた村人の仲間たちでした

「あんたのおかげで皆無事だった!本当にありがとう!」

皆感謝の言葉を述べていましたが、ロウは放心状態でまともに返事もできませんでした

しかし、ある人の一言にハッと我に返りました




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