青い壁第三章 偽善の女神
ロウはビビド地方の国境付近にいました
ここは長年に渡りサウスウィンドと領土の取り合いをしている土地です
ロウはその最も激戦になるであろう、最も戦人が集まるであろう場所で身を潜めていました
ロウが街を出て数日後
海沿いの大地を轟音が叩き鳴らしました
情報屋の言っていた通りです
グレイ共和国との戦いで手薄になっていたビビド地方の防衛陣に向かい、サウスウィンドの魔装軍が突入してきたのです
「北東、魔装兵部隊を確認!砲撃用意ッ!!」
ビビド軍防衛部隊による牽制射撃とサウスウィンド魔装軍による砲撃が開始されました
ドンッ!ドドン!
ガギィン!バキィン!
両軍の攻撃が、突如として現れた巨大な青白い壁によって防がれました
「・・・あれは!?」
地平線まで広がり、山をも超えるほど高い青い光の壁
その中心
両軍が目にしたのは、障壁の真ん中で佇む小さな獣人の女の子でした
少女は叫びました
こんなことは止めてください!
戦争なんか、止めてください!
「またか・・・『青い壁』め・・・!」
サウスウィンド魔装軍はためらうことなく砲撃を続けました
ドドンッ! ガキィン!
バキィンッ!!
対魔術能力を持った鋼弾砲撃をもってしても壁には傷一つ付きません
一方で、応援要請を受け駆けつけたビビド連盟の兵団が続々と集まり始めました
この状況下で攻め入るのは得策ではない・・・
やがてサウスウィンド軍は砲撃を中止し、撤退を始めました
「敵軍、撤退を確認!追撃許可を!」
ビビド連盟援軍隊長の言葉に拠点防衛兵長が手をかけました
「ならん 『青い壁』があっては、こちらも攻め入ることは出来ん」
「・・・そんな・・・!」
「ここは堪えよ ・・・また奴らが攻めてくるやも分からん 全隊、警戒を怠るなよ!」
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「また出たのか・・・『青い壁』・・・」
ビビド地方国境線付近の駐屯地
兵士たちは食事をとっていました
「どんな戦場にも出てくる・・・何なんだ、あの子は?」
「知るもんか ・・・だが、あれにこの国が救われてるのも事実だ」
「ああ 壁が無ければ制圧されていた戦いがいくつもあった・・・今回もその一つだろうな」
「巷じゃぁ『強きをくじき、弱きを救う正義の壁』なんて言われてるそうだぜ」
「あながち間違っちゃいねぇな・・・正義かどうかは分かんねぇがな」
「まるで鳥かごに押し込まれてる気分だぜ」
「確かに ・・・死ぬまでじっとしてろってか」
「死ぬまでか・・・この国が潰れるのと、あの子が死ぬの、どっちが先か、だな」
防衛兵たちがのんきにこんなことを言っている中、一人の兵士は黙々と食事を摂っていました
「シン、お前はどう思う?あの女の子が戦争を止められると思うか?」
シンと呼ばれた魔族の男は目線だけ向けて口の中のものを飲み込むと、ひと呼吸おいて渋々答えました
「・・・あの子の意思、次第だな」
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