最終戦争第三章 偽善の女神
新西暦4550年
世紀の戦いと言われた大戦がこの年行われました
ビビド、グレイ、サウスウィンド
三つ巴の戦いが激化した、まさにその年でした
ロウはある廃墟に身を隠していました
そこは3カ国の国境線上
最も多くの血が流れた激戦区でした
かつてここには肥沃な大地が広がっており、大勢の人で賑わう平和な街がありました
それがサウスウィンド連合による領土確保のための侵攻を発端とし、3カ国による領土の奪い合いと化したのです
激しい奪い合いは何も生みませんでした
三人の子供がぬいぐるみを引っ張り合うように、大地は荒れ果て、引き裂かれ、街は街としての形を失い、そこには廃墟だけが残ったのでした
悲しみを生むだけの戦いなんて
誰も望んでいないのに・・・
なんでこんなことを・・・!
ロウは打ち震えていました
怒りを平和への願いに変え
慟哭を根性に変換し
彼女はマナを溜め込みました
〜
四方から振動が伝わってきます
鋼の擦れる音 土埃の匂い
ビビド連盟とグレイ共和国の軍勢です
ロウは驚きました
どちらの部隊も同じ方角から来たのです
どちらも争ってはいません
同じ色の鎧を身にまとい
同じ色の旗を掲げています
二つの国が
手を取りあったのです
ロウが壁を張ったことにより、サウスウィンドの攻撃をまぬがれてきた両国は共に協力して戦力を整え、大国に立ち向かうことを決めたのです
「グレイ海洋連合国」か誕生した瞬間でした
[『青い壁』が生み出した奇跡の合併]
各国で賞賛の声が上がっていました
ロウは悲しんでいました
私のせいで
また争いの火種を生んでしまった
私のせいで・・・
ロウは廃屋の中で物憂げな瞳を連合国に向けました
東から怒涛の勢いで馬の駆ける音が鳴り響きます
サウスウィンドの兵団です
鉄鋼騎士、魔術師、魔獣軍
山のような戦力です
この国境線で今、両国の総力戦の火蓋が切って落とされようとしていました
ジリジリと国境線に近づいていく両軍
山から朝日が昇り、まばゆい光が大地を照らしました
何を合図とも無しに
一斉に両軍が突撃を開始しました
ドドドドドドドドドドッッ!!!!
同時にロウも急いで廃屋から飛び出します
防壁を・・・!!
ドゴォバァアンッ!!
突如、ロウの足元が弾け飛びました
空中で一回転し、ロウは尻餅をつきました
サウスウィンド軍
超長距離精密爆撃部隊からの遠距離砲撃です
サウスウィンドはロウの登場を予測していました
だから、あえて大量の部隊を用意したのです
単純に 考えもなく 無謀に
戦火に身を投じる 愚かな獣人
浅はかな偽善の乙女
あの『壁』さえなければ、こんな苦労することもなかったものを・・・
ここで仕留める
ここで戦いを終わらす・・・
体勢を崩している間にも遠距離砲撃はロウに襲いかかります
ドオォンッ!バガォンッ!
障壁が・・・展開できない・・・!!
激しい砲撃でマナを練り上げる暇がありません
それに・・・上手くマナが展開できません
遠距離砲撃にはサウスウィンドが技術の粋を持って作り上げた抗魔剤散布装置が内蔵されていたのです
元々はビビド連盟魔術部隊の制圧の為に開発された運用試験段階のものでしたが、この機を逃すまいと莫大な費用と資源を用いて完成され、全砲弾がロウに向けられていました
こんな・・・こんなことが・・・!!
そんなロウをよそ目に、ついに地上部隊が衝突し始めました
ガギィンッ!カイィンッ!
金属のぶつかり合う音が一帯を覆います
ズバッ! ゴロッ・・・ボタ・・・
ふらつくロウのそばに生首が転がり落ちました
ヒッ・・・!?
ロウは飛び退きます
直後、長距離砲撃が炸裂し、転がり落ちた首を跡形もなく吹き飛ばしました
ロウはパニックに陥っていました
壁は作れない
戦いは止められない
自分の周りの者が無差別に死んでいく
逃げれば逃げるほど戦火は広がっていく
なんて・・・
なんて私は弱いんだろう・・・
バゴォンッ!!
砲撃で足元がすくわれます
ロウは大きく吹き飛びました
ポスンッ
ロウが落っこちた先
それは後方支援をしていたグレイ海洋連合の重騎兵隊のど真ん中でした
「防衛対象確保!! 第8部隊!後退ィ!!」
重騎兵の部隊の一人がロウを抱きかかえ、部隊を引き連れ、戦火の中心から後退し始めました
だめ・・・!
壁を・・・壁を作らないと・・・!!
ロウはジタバタともがきました
「・・・いいから、じっとしてろ」
ロウを抱えた兵士は、少女をキッと睨みました
ロウはピタッと動きを止めました
絶えず衝撃と爆音が響きます
爆撃は精密にロウのもとを狙ってきましたが、重騎兵の防御装甲がかろうじてそれを防いでいました
やがて爆音も金属音も遠のいていきました
ロウに抵抗の意志はありませんでした
あの戦場に壁を張る場所はない
無理に張れば人もろとも潰してしまう
マナもまともに使えない今、自分に出来ることは何もない
それより・・・
彼らは私をどうするつもりなんだろう?
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