必然という犠牲第四章 教えて
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ロウがお茶を煎れている間
ガルアは口を一文字に結んで椅子に浅く腰をかけていました
ガルア・・・
どんな事があったのかは分かりませんが
私は受け入れましょう
さぁ、報告を・・・
ティーカップを運ぶ少女に石柱族の青年は言葉を切り出しました
「・・・北東、オレン国で・・・また抗争が起きました」
テーブルにカップを置き、ロウも椅子に腰を下ろします
「戦闘員に・・・我ら教団員が数十名・・・確認されました」
ロウはフゥ・・・とため息をつき うつむき、涙を浮かべました
・・・ごめんなさい
〜
広大な世界がロウの想いを肯定し続けることはありませんでした
聖獣教以外にも数え切れないほどの宗派が存在します
彼らとの対立は必然でした
争いを望まない聖獣教は、絶対的な神を信仰する他宗教に干渉しませんでした
故に、こちらからは近づかず、攻められれば逃げ、細々と声を上げる他ありませんでした
進める道の狭さは教えの通達に悪影響を及ぼしました
『伝言ゲーム』
人との距離が遠ければ遠いほど
伝える相手が多ければ多いほど
伝わる情報は少しずつ形を変え元の意味を失っていきます
ロウの教えを信じ、それを伝えようとする信者が増えたことで、教えは遠い土地まで広まって行きました
それは同時に、多種多様な人々の思考に揉まれたロウの教えが、形を変えて広まることを意味していました
ロウが教団員に求めていた、やさしく大雑把だったアドバイスは断定的で強固な理念に変化し、多くの人々の生活や思想を拘束しました
「平和のために、誰も殺してはならない!」
「皆が幸せを望むなら、武器は不要だ!」
「聖獣教の教えは絶対だ!」
歪んだ思想は、僅かなロウの知識と捻じ曲げられた想いを乗せて世界に発信されていきます
形を変えたロウの教え
信じきった民は非暴力を貫き、無抵抗に死んでいきました
信じきった国は兵器を廃止したために、近隣の国や魔物の群れに成すすべなく蹂躙されていきました
狂信者は教えを守らないものを無差別に殺していきました
捻じ曲がった教えに気づいた者たちにより、各地で信仰派と紛争が起きました
望まれない争い
舞い上がる灰色のタマシイ
死へと向かう伝言ゲーム
不幸へと誘う悪魔の宗教
この世界の現状に、ロウを邪神と罵る者たちが次々と現れました
〜
「言うまでもなく、あなた様のせいではございません ロウ様」
シクシク泣き声を上げるロウの肩に、ガルアのゴツゴツした腕がそっと優しくかけられました
「あなた様は多くの人を救ってきました これは紛れもない事実です 争いはその弊害の一つに過ぎません」
「これらは我ら、伝道師の責任 何も気に病むことはございません あなた様は誰も傷つけてなどいないのですから」
「例え我らの行いが悪行と罵られようと、それは教会設立を提言した私の責任であります!」
でも・・・でもっ・・・
「ロウ様はもうお休みください 後は我々にお任せを・・・平和への礎は我々だけで十分です」
ガルアは自身の胸に腕を振るいました
ガキィンと鉱石のぶつかる快音が響きます
「このガルア、命に換えても、ロウ様の教えを正しく継いでいきましょう!例えこの身が果てようと、例え万年の時を掛けようとも!」
「我々があなた様の理想郷を作り上げましょう!平和な世界を! それが、あなた様の世界なのですから・・・」
・・・ガルア
ありがとう
ありがとう・・・
その時です
バァン!!
教会の扉が荒々しく叩き開けられ、重装甲に身を包んだ大勢の兵士が狭い室内に一斉に入り込んできたのです
ここバラン地方の大都市
ブラウン国の大軍団です
「聖獣教教祖 ロウ!虚偽告罪と洗脳行為の容疑で貴様に逮捕状が出ている!裁判所まで同行願おうか」
兵士の言葉にガルアは声を荒げました
「なっ・・・なんだと!?そんな馬鹿な!!」
ロウは静かに座ったまま、取り囲む兵士たちを一瞥しました
「貴様の行いは国家法を侵害した 大人しく我が国に身柄を引き渡すのだ!」
兵士の一人がロウの腕をグッと引っ張り上げます
「・・・!やめろ、貴様ら!教会でこのような行い、許されんぞ!!・・・グウゥッ!?」
兵士に飛びかかろうとするガルアを、待機していた屈強な兵士の腕が鷲掴みにします
「聞けぬのであれば・・・貴様らの教団を制圧させてもらうぞ」
「・・・!?」
無抵抗のままロウは兵士たちに引きずられていきます
ロウには分かりました
彼らの言葉が本気であることを
国防戦力として地方全域に配備されているブラウン国の兵士団
もしロウが抵抗するならば、その情報は国中に飛び回り、教団員たちは皆殺されてしまうだろう
長い年月と共にマナの扱いを高めていたロウは世界の人々の動きを感じ取ることができるようになっていました
兵士たちに押さえ込まれるガルア
兵士に引っ張られたまま、ロウは背中で答えました
ガルア・・・
決して無理はしないで・・・
あなたは
あなたの幸せを
探しなさい・・・
あなたのしたいように・・・
ここはあなたの世界なのだから・・・
幾度も耳にしてきた言葉をロウは自分の口から伝えました
〜
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