To 1989:07/11
ディアー.へ




私はディアー.
喧騒に満ちた都会の風が窓を叩く

ネオン輝く繁華街
飴玉を散りばめたような風景を一瞥し
キミは再び机に向かう

今日の私は黄色のジャケット
レモンみたいな明るい服
彼女が大好きな色のこの服は
君と彼女が一緒に買った 思い出の服

こっちに来てもうすぐ一年
キミはポツリと 寂しげにつぶやく
この服を見ると思い出しちゃうかな
向こうでの暮らし 彼女との生活
こっちに来てから触れられない
懐かしい日々

通じない言葉の壁
食い違う意見
慣れない日常生活
いろんなフラストレーションと戦うキミ

でも 辛いことだけじゃない
新しい仲間 新しい出会い
今まで知らなかったことに触れた喜び
そしてなにより
彼女から届いた嬉しい知らせが
今 キミを支えているよ

いろんな思いを巡らせながら
キミは私を彩り始める
仕事で作るのと同じような
真面目できちっとした刺繍
ちょっと固いかな?
でも この服はとてもステキ
キミの真面目さがトレードマークなんだ

じゃあ出発だ
生まれて初めての飛行機
真っ暗で外は見えないけど 空の旅もとても素敵
キミの想いをのせていくよ

カタンと揺れる赤い部屋
隙間から入る明かりを受けながら
私はゆっくり時を待つ
二度目の明かりを受けたとき
再び部屋が カタンと揺れる

やあやあ 久しぶり
あの時以来だね
何度目の服になるのかな
さあさ 部屋に戻ってゆっくり見てよ

朝日が差し込むフローリング
紅茶の香り 小鳥のさえずり

小さなテーブルに写真と私
キミは大きなお腹をさすりながら
笑顔で私の服を見る
このジャケットはキミ達を想う
彼からの心からの「言葉」

生真面目な彼らしいや
仕事で使ってる機械の名前や
向こうの企業の重役の名前なんて
わかんないし 知りたくもないよ
でも キミは笑っている
彼らしい「言葉」の数々
それは 彼が彼でいる証だから

小さな男の子が写真を掴む
ほら パパだよ
こんな大きな機械を作ってるんだ
すごいでしょ
キミに向かって 大声を上げる子供
そうだよ パパだね
もうすぐ帰ってくるからね

・・・おやおや
ちょっと彼らしくない「言葉」が
最後の最後に ポツリ
キミは顔を赤らめて
でも すごく嬉しそう
真面目だけの彼じゃないんだよ
仕事に対する情熱
そして 家族を思う愛情
この「言葉」は 本物なんだ
彼の心の底からの「言葉」なんだよ

重そうな体を持ち上げて
キミは私を棚に重ねる
たくさんの黄色のジャケット
君と彼をつなぐ架け橋

君はポツリと呟く
私も 愛してるわ あなた
・・・ふふふ なんだかステキだね


私はディアー.
妬けちゃうなぁ
幸せの黄色いジャケット
ロマンチック?どうだろうね




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