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ディアー.へ




私はディアー.
土煙が香る野外
人々が右往左往する喧騒の中
キミは木箱を机に 私を彩っている

ここでの私の服は決まっている
まだら模様のトレンチコート
いろんな材質でごちゃごちゃの服が
ここの忙しさを物語っている

キミの手はなかなか動かない
「言葉」が見つからないのかな?
正直に記すのも 嘘ついて誤魔化すのも
今はとても難しいね
思いついた「言葉」を爆音がかき消し
飾った想いが私と共に火薬の海に消えていく
目の前の惨劇が キミから「言葉」を奪ってしまう

飾る暇もなく 服が仕上がる
シワだらけ 泥まみれのトレンチコート
後は私に任せて
必ず想いを届けるよ

キミが生み出した「言葉」を乗せて
私は運ばれていく
ジャングルの中 濁流流れる川の中
時には弾丸が頬をかすめながら
想いよ消えないで 必ずあの人に届きますように
私はただただ そう願う

潮風に当てられながら
風雨にさらされながら
キミの想いを乗せて 私は進んでいく
揺らり揺られて 大海原
厳しい自然に負けてられない
ほころび 滲み出し 破けてもなお
揺らり揺られて 大海原
意地でも届け ボロボロのトレンチコート

様々な困難を越えて
意地でも着いた 目的地
茶色の土壁 トタン屋根の家

雑多に放り出される私
玄関の前だからもう安心
「言葉」はギリギリ大丈夫
なんとか届いた トレンチコート

カラカラと戸の開く音
一目じゃキミは気づかないかな?
風化しかけの私の「言葉」
気付いたキミは目を丸くして
私を抱えて 足早に部屋へ戻っていく

まん丸テーブルの上に ボロボロのトレンチコート
キミと小さな女の子が二人
正座して私を囲んでいる

ゆっくりと「言葉」が放たれる
・・・切ないね
カタカナだけの「言葉」
子供たちは何も分からずキョトンとしている
今はわからない方がいいかな
うつむくキミに私は何もできない
この「言葉」を届けるのが私の使命だから
これ以上キミに何もしてあげられないの

ただ この「言葉」は本物だから
家族を想う気持ちと
勝利を願う強い意志
所々服に残された弾痕や風雨の跡で
私は君に問いかける
彼は勇敢に戦っていた

クシャクシャのコートをピンと伸ばし
汚れを拭き取り キミは運んでいく
仏壇に腰掛ける私
線香の香り モノクロの写真
手を合わせるキミ
いつまでも いつまでも
キミは手を合わせる

ロウソクの暖かさを感じる私
染み付く線香のほのかな香り
時計の針が不規則に進み
カレンダーが何百枚も剥がされていく
こんなにも永く陽の光を浴びるのは珍しい
嬉しいけど 手放しでは喜べないキモチ

今日も香る線香の香り
日に焼けたコートはロウソクに照らされる
三本目の線香が置かれ セーラー服の少女が手を合わせる
私はただただ それを眺めている

今日は外が騒がしい
何かあったのかな?
キミは子供達と一緒に玄関へ向かっていく

・・・ああ 久しぶり!
なんだ 元気そうじゃない
キミの「言葉」が嘘になって本当に良かった
こんなに素晴らしい笑顔を
私は消える前に見ることができたのだから

ボロボロの彼の服を抱きしめるキミ
ボロボロの私の体を握り締める彼
これ以上必要ないから そうするのが一番だと思うよ


私はディアー.
庭先で炎を纏う私の体
舞い上がる白煙は 勝利の証
キミ達の願い事が 叶った証



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