7歳SS

※会話が多め

〜花畑〜(番外編「プレゼント」のその後の話)
以前、彼に引っ張られながら私に花をプレゼントしてくれた時に約束した花畑に行く事になった。彼は終始ケラケラ楽しそうに笑いながら私の腕を引っ張り先導してくれる。私は引っ張られ何度か足を縺れさせながら着いて行き、だいぶ歩いたようで次第に人の気が無い山の中に入っていった。
「まだ着かないの…?」
「うー?…あ!あれー!あれ!あーち!」
「ちょ、ちょっと待って…ゼェ…」
目視では未だに花畑は見えはしないが、やっと目的地付近まで来たのか私の手を引く力が強くなった。終始彼のペースで歩いてるお陰で躯は既に疲れ切っていた。
「ちいくん、あっち!いくの!」
「分かった、分かったから待って…私の体力限界なの待って…」
「きゃー!」
「あああ…もう仕方無いなぁ」
私がちんたらしてるせいか、彼の好奇心が旺盛なのか。彼は先に走り出してしまった。その姿を追いかけながら自分のペースで歩いていれば、目的地はすぐそこだった。
「わぁ…!凄い綺麗…」
「きゃー!」
その花畑は、言葉を飲むほど圧巻であった。小さな山であるが、木々に囲まれ広々と開けたその場所には一面に色とりどりの花が咲き誇る。その中に花を摘んでは楽しそうにクルクル回りながら宙に放ち、花の雨を浴びていた。
「嗚呼、千切っちゃ駄目だよ」
「う?」
「一緒に見よっか」
「ん!」
その場に座り込んで花をじっと見つめるチビ君の隣に腰を下ろして一緒に観察する。時折、楽しそうに笑みを浮かべながらこちらを見るので、こういう時間も悪くないと彼の頭を撫でるのであった。

帰宅後
白「…で、その花冠は?」
「似合うかなーってつい…」
中「ふふん!」
白「おー善かったなチビ」
中「ふへへ」
作って貰った花冠を被ってルンルンしてるチビ君
数日後に枯れてしまった花冠に大変ご立腹でギャン泣きした

〜迷子〜(番外編「プレゼント」、上の話より前) 
「あー!あれー!」
「わっちょっと待って…!」
少し知識は付いてきたものの、未だに世間をほとんど知らない彼は好奇心が旺盛で、見る物全てに興味が沸いている時期であった。懐いている彼女をよく外に引っ張り出しては「あれは何だ」「これは何だ」と聞いて知識を吸収する日々を過ごし、今日も同じように1日が終わる、筈だった。
「こえ!なーに?…う?」
「あえー…あう…ど、こー?」
外でははぐれないようにと手を繋いでいたのを振り払ってその場所に駆け、振り向いた彼の視界には引っ張り出してきた彼女の姿は無かった。

「チビ―!何処だー!」
「おーい!ちびちゃーん!」
「何処行っちゃったの本当…!」
私の手を振り払って駆けだした彼を追いかけようとしたものの、彼が無意識であろうが異能力を使ってしまい私の視界から外れてしまった。急いで彼が向かっていった方向に行っては探してみたものの彼の姿は無く、それなりの時間を探しらちが明かないと判断しとりあえず人手を集め、拠点に居る子達を掻き集めてはぐれた場所を中心に辺りを探し回る。それでも彼が姿を現す事は無く、焦りが募る一方であった。
「もう日が暮れそうだぜ、どうするよ」
「夜は危ないし早いとこ見つけないと…」
「僕らまではぐれちゃ元も子も無い。足元が見えなくなるまでに帰るぞ」
「…分かった。それまでは探すからね」
「そりゃ勿論だとも」
彼を探して数時間が経過した。これだけ探して彼を見つける事は出来ずに日が暮れてしまい、これ以上探すのは危険だと判断して散らばっていた子達を集めてゾロゾロと拠点に戻る。その間も周りを見て彼が居ないかを確認するが、目立つ髪色が視界に入る事は無い。
「チビならきっと大丈夫だろ、あいつ名前大好きだし」
「うんうん、なんだかんだ拠点に先戻ってるんじゃない?」
「そうだと善いけど…」
これだけ探しても居ないとなると、誘拐された可能性の方が高いのでは無いだろうか?だがしかし彼は無自覚であろうが異能力者だ、それもかなり強力な異能と言えるであろう。普通の人間とは違うが故に拐かされそうになれば異能でも使って抵抗出来る筈だ。否、逆にその異能欲しさに万全な状態で拉致を決行したとなれば?異能が使えない状況であった場合、子供である彼なんて大人からすれば抑えるのも容易いだろう。次々に浮かび上がる負の思考に嵌まってしまう。こうなれば抜け出す事は困難だ、足元を見てとぼとぼ歩く私を見かねて白瀬が励ましてくれた。
「そんな辛気くさい顔すんなって、な?」
「うん…」
「えーっと…ん?」
「何か聞こえない?」
気落ちしてる私に慌てふためく白瀬を筆頭に、何人かの子達が「何か聞こえる」と言いだしたので全員が耳を澄ませる。その声は絶叫のような、泣き声のようなものだった。
「こっち近づいてきてねえか?」
「確かに…?否向こう行った…?」
「あっちって拠点の方だよな…」
その声は私達に近づいたり遠ざかったりしているようで、もしかしたら近くで襲撃があったかもしれないと皆が警戒して息を潜める。足音を極力出さぬように歩き、周囲を見回しながら拠点まで足を動かした
「拠点に誰か居る…!」
「まじかよ…!ん?あれって…」
「あ”あ”あ”あ”!!!ヒッ、うぅ”〜〜〜!!!!」
「ち、チビ君!何処行ってたの〜!もう!」
「あぁああ”あ”!い”たぁ!わ”あああ”あ”あ!」
その声の主は泣き叫びながら拠点の周囲を彷徨いていた彼の声であった。わんわん泣き叫ぶ彼に駆け足で近づけば彼は私に腕を伸ばしてくるのでそのまま抱きしめた。
「もう善かった…本当善かった…ビックリした…」
「う”ぅ”ぅ!ヒック、う”ぅ〜〜〜〜!」
「ごめんねぇ、ビックリしたね、怖かったね」
腕の中で震えながら泣く彼をギュウギュウ抱きしめた。
次の日から数日間、自ら外に出たいと云う事は無くなり、移動時は必ず手を繋ぎ隣にピッタリと引っ付いてくる事となった。