最期
※死ネタ
※彼女の異能力が判明します。
月日が経つのは早いもので、ポートマフィアに入って10年以上が経過していた。成人してから1年が経つのが早いと実感し、現在私は20代も折り返しとなっていた。年齢は変化していくも仕事内容は全く変わり無く、書類を全てほっぽって短期任務に赴いた中也の代わりに今日も今日とて私が紙と睨み合う。全く、彼も善い歳なのだからいい加減書類整理を押しつけるのを止めてもらいたいものだ、いつになれば自立してくれるのだろう。年々大きくなるその悩みを頭の片隅に置いてまずは積み重なった書類を捌く事に集中した。
書類が多すぎて逆に手が付かない為、簡単なものを手伝って貰おうと私が以前下級構成員として仕事をしていた場所に足を運び、暇そうにしていた構成員達に片っ端から声を掛けた。ちなみに、同僚は中也に引き連れられ任務に向かってしまった為、誰も手伝ってくれる人は居ない。指示など私がしないといけないのでそのまま滞在し、書類を次々と捌いていった。
ある程度捌き、少し休憩でも入れようと顔を上げた時であった。突如、外から爆発音が鳴り響き、地面が横に揺らいだ。廊下からはバタバタと忙しなく足音が鳴り響き、怒号のような声が聞こえてくる。全く状況把握が出来てない私達は、何だ何だと構成員同士で騒ぎ始めていれば私達が居る一室の扉をおもむろに開けた構成員が告げた。
「敵襲だ!」
その場に居た人達と慌てて武器庫に向かって武器を調達する。異能力者といえど私の異能は場合によっては使えないのだ。
私の異能力「弟切草」は反撃系の異能力である。簡潔に言えば私に危害を加えてきた人間は相応の死に方をする、そんな異能力だ。
ただし他の異能力者とは違い弱点というのが多数存在する。まず私自身が危害を加えてきた相手を認識しないといけない、その上「反撃する」という私の明確な感情が必要というものだ。また、調節というのが存在しないのか私の扱いが下手なのか、相手は死んでしまうというマフィアでは重宝されるだろう厄介な異能力だ。まあ、それで何度か助かってはいるのであまり文句は言えないのだが。
あくまで私に危害を加えようとする人間じゃないと発動しないので、中也や芥川君のように敵を一気に殲滅出来るかと言えば答えは否だ。あくまで私が危険に迫らないといけない為、大多数がただ無機質に攻撃してくる場合は発動しにくいようで、異能でせいぜい一部だけを壊滅出来れば良い方である。
つまりは現在の私は手にしてる銃だけで何処まで戦えるかが肝となるのだ。中也の訓練である程度精度が上がった銃の腕は、果たして実践でどれ程使えるだろうか。一抹の不安を拭い捨てる事は出来ずに、私はただ敵を排除する為に戦場に足を向けた
敵は強かった。とは言ってもあくまで戦い慣れしていない私から見た話である。今回この戦いに加勢し短時間で戦果を上げる紅葉さんや芥川君からしたら別に強くも無いのであろうが、ほとんど一般人である私からしたら銃は充分脅威であるのだ。銃弾が貫通し血が止めどなく溢れ出る片足をなんとか引きずって敵の居ない場所へと向かう。痛い、痛い、痛い。撃たれた所がジンジンと主張し脂汗が流れ落ちる。激痛で最早何処が痛いのか判断が付かない。血が流れすぎてしまったのだろうか、貧血のせいで纏まらない思考のままただ生きる為に足を前に踏み出す。
パンッ
近くで軽い音がした。その瞬間、燃え上がるように熱い感覚が心臓の辺りを貫いた。膝から崩れ落ちた身体は、糸を切られた操り人形のように力無く地面に叩き付けられる。起き上がろうにも身体が腕力で持ち上がる事は出来ず、辺り一面に広がる血液で手が滑った。そこで初めて私は自分が撃たれた事に気がついた。なんとか身体を捻って私を撃った人間を確認すれば、すぐさまその人間も身体から血を噴き出して倒れる。私の異能力が無事発動したようで、倒れていった敵を見送る。
じくり、じくりと心臓が動く度に血液が体外に排出される感覚が気持ち悪い。鉛のように重たい躯は指1本動かす事が出来ず、ただ遠くで未だに戦っている人達を狭くなっていく視界で見ているしか出来なかった。
あ、はは、ねぇ、やったよ中也、自分で倒せた。もう私が面倒見られる事も、守られることも、きっと無いよね、私が倒した人数、ちゃんと、きろく、しといてよ、ね
目を閉じる寸前、彼の顔がありありと目の前に浮かんだ気がした。