if探偵社
※「感情の変化」の文章1部抜粋してます。「___」記載以降オリジナルになりますのでめんどければそこまで読み飛ばして下さい。
今までは羊の拠点に居る事が多く、居なくても大体の居場所の検討はついていたが、今やその羊も解散しており、行き場の無くなった彼女が何処で何をしているのか気になっていた。寒さで凍えてないか、野垂れ死んでないか、復讐されて刺されてないか、痛みを感じてないか。色んな不安が脳裏を過り、仕事にも集中出来ず割り振られた自分の机の上に山積みになる書類を見て溜息を一つ零した。
そういえば昨日、たまたま会った彼女にバイトを探すつもりだと言っていたはずだ。出会ったのは本当たまたまだ。彼女を探して1時間なんて経っていない。本当たまたま偶然見つけて会話しただけなのだ。脳内で一人言い訳をしながら1つのアイデアが浮かんだ。働き先を探しているなら同じポートマフィアに入らせれば良いのではないか、と。思い立ったらすぐ行動、山積みになった書類に目もくれず、バイト先を探してふらふら彷徨ってるであろう彼女を探しにマフィアの拠点から飛び出した。
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あれから名前を探して1週間が経過した。彼女が居る所を事前に聞いていないせいで全く見当が付かずフラフラ出歩いていれば、やがて姐さんに「仕事を放り出して女を追いかけるとは何事じゃ」と怒られてしまった。さすがに息抜きとして与えられた10分程度の休憩時間を1時間程掛けて彼女を探していたのが悪かったのか、外を出歩くなと云われてしまった。否、だから俺は彼女を探してはいない。あれだ、ただ時間を見るのを忘れていただけだ。うん。俺的には一刻を争う事だとは思うのだが、姐さんの言い分も正しい。さすがに仕事をほっぽりだしてしまうのは悪いと感じて机の上に積み重なる仕事をなんとかこなしていき、退勤時間になったらすぐに名前を探しに出るという方向で落ち着いた。それでも彼女が見つかる事は無かった。
彼女が見当たらず気が立ってきたのは彼女を探し始めてから2週間目が経過した時だった。集中の糸がすぐに切れる俺を見て姐さんはため息を吐き、太宰は今日も今日とて鬱陶しい。俺が苛立っているのに気づいてるのか尚のこと絡みがウザくなった。
彼女の捜索についてはマフィア付近は勿論の事、擂鉢街、羊の拠点、貧民街、元々住処にしていた所まで捜索範囲を広げて彼女を懸命に探せど、俺の目の前に現れる事は無い。貧民街に関しては目撃証言が無いので最初の方で除外したものの、世界は広すぎて絞り込む事が出来なかった。
まさか何処かでのたれ死んでしまったのでは、と気が気でなくなってしまったのは彼女を探し始めてから1ヶ月が経過した時だった。徐々に顔色が悪くなっていく俺を見てか姐さんが心配しだす程度だ。正直云って全く大丈夫でも無いし今すぐにでも彼女を探しに行きたい。それでも行けないというのはなんともどかしい事だろうか。
外回りの任務に同行する時は必ず辺りを見回して彼女を探す事を欠かさない。仕事が終わった後の探索は以前探していた所とは正反対の繁華街の方向に狙いを定めてみた。人間にとって食事は必要不可欠であるので、盗むにしろ購入するにしろ必ず何処ぞの食品売り場に現れるだろう。今まで使っていた店や目についた場所、とりあえず食品を扱っている所があればグルグル回って探した。時折、警備員みたいな奴に尾けられもしたがお構いなしだ。出入り口に張り込んだりしてもみたが、矢張り彼女の姿は無かった。
どうしてこんなに見つからないのだろうか。矢張り俺が知らない間に事故や事件に巻き込まれて死んだんじゃ…?否考えるな俺、きっと名前の事だし頭脳を使って生きてるだろう。いや待てよ、あいつめちゃくちゃ運動音痴じゃ…嗚呼本当何処行ったんだあいつ!外回りの任務で姐さんの横を歩きながら名前を探す。目が血走っていて気味が悪いと云われたが知ったこっちゃない、目を瞑った一瞬で名前が視界から外れてしまったらどうする、俺に瞬きなんて不要だと目をかっ開いて周囲を見る。
「おや、何じゃ?」
「帽子ですね」
「風で飛ばされたようじゃな」
俺達の目の前にひらりと帽子が落ちた。白を基調とした可愛らしい帽子は今し方吹いた突風で飛ばされてしまったらしい。それにしても名前に似合いそうな帽子だ。姐さんが先にそれを拾って土埃を叩いていると、後ろから「すいませーん!」という声が、ん?この声…
「名前!?!?」
「あれ、中也?」
「おま、おまえ、いままでどこ、いってたんだよ!」
「え?あ、泣かないでよ」
「泣いてねぇよ!!!!ばーか!!!」
「子供じゃないんだから…」
名前の肩をぐわしっと掴んでその場に滞在させて聞きたい事を根掘り葉掘り問いただす。どうやら彼女の行動範囲は俺が探していた所とは全く別の所だったようで、今までの行動は無駄足だったと云う事だった。とりあえず死んでいない事に安堵し、掴んでいた肩を離す。
「で、今まで探してたって事は何か用事でもあったの?」
「嗚呼。名前、お前ポートマフィアに入れ」
「今バイトしてるから無理」
「えっ」
「えっ」
俺が探してる間に他のバイトが見つかってしまったらしい。全くその可能性を考えていなかった俺はこいつをどうやってバイトを辞めさせマフィアに勧誘するか一晩費やした。
数年後、ことごとく俺の作戦は失敗し勧誘出来ないままの彼女がまさか武装探偵社の一員であり、俺が居るポートマフィアと対立するだなんて思いもよらなかった。