高校生の話

※ちょこっと夏目友人帳とクロスオーバー
※転生の話とまた別の世界線としてお楽しみ下さい

私の家系はいわゆる特殊能力がある訳でも、神社や寺の娘という訳でも無い。普通の家系に、普通の両親から産まれた子供であった。平々凡々と生きている特にこれといった特徴も無い娘である。ただ1つだけ普通の人と違うというならば、前世の記憶があるという事であろうか。
前日にテレビか何かで見た剣道がその頃の私にしては物凄く格好良く見えたのがきっかけだったのだろうか、今ではよく分からないが至って普通に寝て起きてみれば記憶が戻っていたという訳だ。アニメのように頭が痛くなって突如思い出したりした訳でも無い。自分の最期を思い出せば身体が硬直してしまい震えが止まらなくなるが、それ以外は特に混乱する事も無く生活出来てる筈である。たまにシロの事や本丸に居た刀剣男士が気がかりになる事はあるが、それももう過去の事であるので確認する術は無い。
現在、世分高校という学校に通っている。勿論部活は剣道だ、防具は重いし臭いし身体中痛いし悪い事ばかりではあるがもっと自分が強ければあの時も勝てたのではないかと逆に活力になっている。次遡行軍が来ても絶対倒してやる。否、次が無い方が良いのだが、まあ比喩というやつだ。実際は来なくて良い。決して、決してフラグでは無い。

この学校には長期休暇の時に勉強合宿というものがあり、希望者だけが集ってやるもので強制的なものではない。今回、という訳でも無いが勉強についていけてない私は参加する事にした。それは山奥の合宿所で、周囲には木々に溢れており住宅など目視では確認出来ない。良く言えば自然が多い所、悪く言えばド田舎であった。そこで数日間うんうん頭を悩ましながら合宿期間は終了した。
この合宿所から帰ってきて数週間が経過したが、なんだか身体が重たいように感じる。別に太ったという訳でも無いし体調を崩している訳でも無い。ただ、身体が思うように動かないような、気怠いような感覚だ。なんだか怖くて塩を撒いたが特に効果は無く、それは日に日に強く感じていた。既に学校が始まっていたのでなんとか身体を引き摺っては授業を受けているものの、部活までは出来そうも無いのでそのまま帰宅させて貰ってる日が何日か続いていた、ある日
「あの…」
「はい?」
「最近、可笑しな事ってありませんか?」
「は?」
「いや、えっと…」
「宗教関係の方ですか?お断りしてます」
「え!?いや、違います!」
唐突に背後から話しかけられた。
彼は2年1組の夏目貴志君だ。5組に居る私が何故彼を知っているのかと言うと、彼は去年の夏頃に転校してきた子でその綺麗な顔立ちで少し有名になっていたのだ。クラスの友人は今でもたまに話題にしては格好良いと褒めている。私からしたら白いあの彼を筆頭に顔立ちの良い人間…否付喪神を見ていたので目が肥えてしまっているのだが。
今まで接点も無かった彼が私に何の用だろうか。私にはよく分からないがとりあえずその場から立ち去った。

夏目君に話しかけられたから丸2日経過した。学校には登校したが身体の重さが一段と違う。視界がグラグラ回り少しでも気を抜けば身体が地面に叩きつけられそうだ。こんな帰り道で倒れるなど迷惑極りないし、そもそもこんな人通りの少ない所で倒れれば運が悪ければ誰にも見つからないかもしれない。とりあえず家まで自分の足で帰らねばと気力だけで立つ。
ざわり、ざわりと周囲の気配が変わるのを感じた。厭な空気が辺りを立ち込め、生温い風が吹く。明らかに異常な雰囲気に警戒しようとするも、身体が重くてそれどころではない。どうしよう、重い、どうする、痛い、重い、苦しい、このまま死んでしまえば良い、食ってやる、食ってやる
「危ない…!」
そう言って私に突進してきたのは、2日前に話しかけてきた夏目君だった。
その背後に、ずっと脳裏に焼きついていた白い神様が見えた気がした