本丸の説明の話

本丸の神域に入り、まずは長屋の玄関に入る。事前に政府宛に送っていた日常的に使うであろう必需品や娯楽アイテムは、本丸に送っていたらしく玄関に段ボールの箱が数箱山積みになっていた。これをまた部屋に運んで開くのは大変そうだ。気が遠くなるのを感じながら一歩踏み出そうとしたその時だった
「貴女がここの審神者様ですね!」
「ぎゃあああああ!!!!!」
「あっはっは!面白い反応をするなぁ主!」
「え、何、狐?喋った!?」
「私はただの狐ではございません!」
「キェェェエエアアアアアシャベッタアアアアアアア」
「あっはっは!!!ヒィー!!!」
隣でお腹を抱えて笑っているシロさんの手の中に収まる刀を強奪しては胸に抱き、喋る狐を見据える。何だこの狐、このご時世狐は喋るのが普通なのだろうか?警戒を解かずに柄を握っていつでも抜刀出来るように構えれば、狐は驚き慌てた様子で「私は式神です!」「審神者様をサポートする管狐です!」とその場でピョンピョン跳ねながら弁明した。
「き、斬られるかと思った…」
「す、すいません」
「あっはっは!主は本当面白い反応をするなあ!」
「うるせーですちょっと静かにしといて」
とりあえず本丸の説明をして貰う事になり、シロさんに刀を返してこんのすけを胸に抱きつつ玄関に近い大部屋に移動する事にした。座布団とテーブルは備え付けのものなのかひっそり置いてあったので部屋のど真ん中に設置し、話しを進める。
まずはこの長屋についての説明だ。室内展開図をテーブルに広げてこんのすけの短い前足で指されながら説明されていく。部屋の割り振りは本丸によってまちまちであるのでここは割愛、執務室は一応ど真ん中にあると教えて貰い、そこにマニュアル本やら置かれているので後ほど確認する事を頭に入れる。審神者自身の部屋については、これも本丸によってまちまちなので自分自身で決めて良いという事であったのでここも割愛する。鍛刀部屋や手入れ部屋といった特殊な部屋もあるようだが、後ほど順に回るという事で場所だけを確認する。
「ふーん、色々あるんだ」
「覚えるのに大変そうだな」
「まあこれからここで過ごすのでそこは問題無いかと」
「それにしても、部屋数はこんだけかい?俺の記憶が正しけりゃ、少なくとも40振は居た筈だが」
「部屋自体が広いので1部屋に数振が同室するという割り振り方もありますが、集まり次第では窮屈になりますので増築システムも御座いますよ!」
「へー凄い」
「ちなみに、模様替えが出来るシステムも御座います。」
「模様替え?ってのは何だ?」
こんのすけ曰く、審神者や刀剣男士の趣味趣向によって和室や洋室などそれぞれの好みに変えれるようだ。勿論壁紙や床だけでなく、タンスや照明、その他色々な種類の家具を色や形を自由自在にカスタマイズ出来るらしい。イメージとしては模様替えシミュレーションアプリといったようなものだろうか。横文字に馴染みが無いシロさんは終始頭に疑問符を浮かばしていたが、とりあえず何か凄い事だというのを理解したようで、次第に表情を輝かせて騒ぎ始めた
「凄い!かすた…?というのはよく分からんが、とりあえず凄いんだな!?よし今すぐやろう主!」
「ただしこちらは有料です」
「じゃあ無理だね」
「そんな!!!」
ガックリ項垂れてその場に寝転び明らかに拗ね始めたシロさんを放置しながらこんのすけと話を進めていき、長屋の説明が一段落付いたようでこんのすけは次に出陣について説明を始めた。
出陣をするにあたって審神者である私が出陣させる刀剣男士を選択する。ここまでは普通に選ぶとして、その次がまた色々あるらしい。まず出陣先を審神者が決めるパソコン式とタブレット式がある。パソコンもタブレットも操作方法は同一で、ゲート前にある陣の中に規定の刀剣男士が全員入ればゲートが開いて出陣する仕組みだ。これは選択されていない刀剣男士が入ったとしてもその刀剣は出陣する事は無いらしい。
もう1つの方法は、ゲート周辺に機械を設置する事である。こちらは刀剣男士が場所と時代を選択し、掌をかざせば陣に居る刀剣男士が最大6振出陣されるという事だ。ここで誤って入った刀剣男士が出陣先に送り込まれるという事案も実際あるらしいが、万屋や演練に行く場合や、襲撃された場合に審神者が簡単に利用出来るシステムでもあるので導入を推奨しているらしい。
「よし導入しよう。」
「いきなり元気になったねシロさん…まあうん、導入します」
「分かりました!導入するにあたって何種類か形があるんですが、えーっとこちらをご覧下さい。」
「1番面妖そうな奴で」
「シロさんちょっと黙って」
ぐーたらしていたシロさんが面白そうな気配を察知したのか、腹筋を使って綺麗に起き上がっては話に入ってきた。一緒にタブレットを覗き見れば好奇心旺盛なシロさんは画面をそっと触ろうとしていたのでその手首を掴んで阻止しながら、私は機械の特長などをこんのすけに聞き1番利用しやすそうなものを選択した。