鍛刀の話

こんのすけ視点―――
主様の腕に抱かれながら鍛刀部屋に向かう。
鍛刀というのは、4種の資材を投入して刀を造りあげる事だ。資材は下限は50、上限999を投入する事が出来、その投入数によって出来上がる刀剣が違う。刀剣の種類によって出来やすい配分などもあるのでそちらはマニュアル本を確認して貰う事にする。まず1番初めは全ての資材を下限である50投入して貰い、鍛刀を開始する。
「20分だね」
「そうですね、ではこの手伝い札を使って鍛刀を終了させて下さい」
こんのすけは主である審神者に「手伝い札」と書かれた木の板を渡した。

―――
初日で鍛刀というものを知った。鍛刀というのは、近場にある4つの資材を妖精さんに渡せば刀を打ってくれる代物だ。出陣をせずとも刀剣男士が増やす事が出来る。勿論資材は有限なのであまり消費は出来ないのだが、日課として1日に3回鍛刀をすれば報酬が貰えるので、とりあえず多くもなく少なくも無く来る刀剣の種類が幅広いという噂のall350で鍛刀しているのだが。
「えー、3時間20分」
「次は…3時間20分…」
「…3時間20分…」
そう、全ての鍛刀が3時間20分である。
審神者に就業してからもう数ヶ月は経過した。未だにペーペーであるが右も左も分からない初心者からは脱する事は出来ただろう。それでもまだ分からない事があるので試行錯誤で頑張っている。
マニュアルで書いてるには阿津賀志山までは昼戦らしいので火力の高い太刀・大太刀狙いで鍛刀をしているのだが、何度回しても回しても同じ時間が表示され、鍛刀が完了した頃合いに鍛刀部屋に行けばその場に刀は存在していなかった。これはバグなのではないかという事で数ヶ月前にこんのすけに相談しては調査して貰っているのだが、政府からは未だに結果の返事は来ない。何ででしょうねぇ、何でだろうねぇとこんのすけとネットで購入した煎餅をボリボリ食べながらのんびり鍛刀が終わるのを待つ。
私の本丸のI丸国永、通称シロさんは本霊だと言うのだ。いわば忍者の影分身をイメージすれば分かりやすいが他の本丸に居るI丸国永を分身とすれば、うちのI丸国永は本体らしい。まあたいそうな物を拾ってしまったものだ。今まで本霊自体が手を貸した事が無いらしいので政府の方も対応や調査が大幅に遅れるらしいと少しふくよかになってきたこんのすけの腹を撫でる。実際これは審神者に就任する前に役人に言われたが、その時は本霊やら何やら説明を受けていなかったのでよく分かっていないまま返事していたのは内緒だ。
「む?むむ!」
「どうしたの?」
「主様、政府から返答が届きました!」
「お、まじか。タイムリーだね」
「どうやら本霊であるI丸様に引き寄せられた分霊が鍛刀され、そのままI丸様に還ってるのではないかという事です!」
「…あ〜〜成程」
本来、分霊が本霊の所に戻るには刀解をすれば還ると聞いた事がある。そんな感じで勝手に還ってしまってるのか、それともシロさんが知らない間に吸収してしまっているのだろうか。仕組みというのは全く理解は出来ないが、とりあえずバグでは無いという事で私の本丸はその日以降太刀以上を集めるのはやめ、とりあえず打刀までの刀剣男士を仲間に引き入れる為に新しい黄金レシピを探す事になった。

I丸視点―――
嗚呼、嗚呼煩わしい。
主が審神者になってから早数ヶ月。時間の経過というものは早いものだ。最初は右も左も分からないと言いながらもしっかりと任務はこなしている主を支えていたのに、今ではもうある程度手引書を見ないでもすんなり仕事をこなすようになっていた。全く、俺の所によく来てはあーだこーだ話していたのに、今ではそれなりに刀剣も増えてそっちの方にばかりかまけている。ちょっと位俺にも構ってくれたって構わなくないかい?今頃こんのすけと煎餅をボリボリ貪っている頃であろうか、そんな俺は鍛刀部屋に向かっては刀が打ち上がるのを待っていた。
先程主が「また3時間20分だわ…」と項垂れながら廊下を歩いていたのを目撃した。鍛刀というのは出陣先に事前に居る俺とは違って、その場で俺の霊体から分霊が作られていく仕組みらしく、今現在までの記憶を所有しているが故に主であるこの本丸に鍛刀されたがるようだ。それを毎度俺の所に還らせる為に足を運ばないといけないのだが、勘弁して欲しい。主も主だ、もうそろそろ太刀や大太刀といった長物のれしぴ?とやらを止めてくれないだろうか。
この本丸にI丸国永は、俺一振りで良いだろう。今日も今日とて打ち上がった分霊である俺を吸収するのだ。