メインストリートに移動した。7つの石像が並んだ石造りの地面。グリムは掃除などそっちのけで、石像を見ては1人ブツブツ話している。
見るからに広くて長いそこを掃除するだなんて既にやる気が無くなってしまったが、仕方無い。異能力があれば塵を瞬時に纏める事が出来るだろうに…はぁ、さっさと取りかかって元の世界に戻る手がかりを探そう。
「ハートの女王を知らねーの?」
「は?」
「ハートの女王?偉い人なのか?」
ああ、グリムの独り言を聞いていたのか。目にハートの模様がある男が、グリムに石像の説明をしていく。
彼の名前はエースと言うらしい。グリムが食いついて色々聞くので、他の石像の説明を始めるエースの話を聞き流しながら、ストリートの掃き掃除をこなしていく。
「クールだよな〜。どっかの狸と違って。」
「ふな”っ!?」
エースが腹を抱えて笑い始めた。その笑いは嘲笑を含んでおり、昨日執り行った入学式の事をベラベラ話し始める。何だコイツ、失礼なヤツだな。
「ナイトレイブンカレッジに来る前に、幼稚園からやり直すのをオススメするわ。ぷくく…」
「あ”?」
こちとら親すらも居ない孤児だぞクソが。学校に通う金あるなら寄越せ。
「コイツ〜〜!言わせておけば!もう怒ったゾ!」
「ふな”〜〜〜っ!」
「あ、やっべ」
グリムが魔法を使って炎を出す。このままでは監督不行き届きになって追い出されてしまうではないか。ちょっと痛い目見せる位なら良いと思うが、相手がどういった魔法を使うか分からない以上得策では無い。
「ふな”〜〜〜!!!」
「おっと危ない。それ!」
相手は風を操る魔法のようだ。お陰でグリムの炎があられもない方向に曲がってしまってるではないか。
それを見た他の生徒が煽るものだから、2人の戦いもヒートアップするではないか。
「グリムやめなって、木に引火するから」
「くらえー!」
「そんなん風で矛先を変えてやれば…そらっ!」
矛先を変えた炎は、ハートの女王の石像に直撃し、真っ黒焦げになってしまった。
「…まじかよ。」
2人の喧嘩はまだ鎮火する事は無い。グリムとエースをちょっと脅し…落ち着かせようと仕込みナイフを足元に投げようとした時だった。
「こらー!!!何の騒ぎです!」
「やっべ」
大変ご立腹の学園長の鞭を華麗に避けながら、3人して怒られてしまった。
「3人には罰として窓ふき掃除100枚の刑を命じます!」
私、何もしてないのに。完全なるとばっちりを受けた。今日は手がかりを探す時間は無いかもしれない…あークソ。まじクソ。

メインストリートは、1日の時間を費やして漸く綺麗になった。
学園長から指定された大食堂でエースを待っているが、彼は一向に姿を現す事が無い。
「いくらなんでも遅すぎるんだゾ!?」
「…真逆。逃げたんじゃ?探しに行こう」
あいつ一旦絞めても良いだろう。ちょっと頸動脈にナイフ入れる位なら許されても良いのではないか?元の世界だったら命令に背けば即殺される世界だったのだ、これ位良いだろう。
教室に向かってエースの姿を探す。が、そこに生徒は誰も居なかった。
「誰も居ない?」
「いいや、私が居るよ。」
絵が喋った。グリムは叫んで私の肩の上に乗ってくる。ぽってりしたこの狸、結構重い。
「肖像がには口があるんだから、おしゃべりもするってものさ。普通の事だろう?」
「いや、普通は喋らないと思うけど」
エースが何処に居るか絵画に聞けば、彼は少し前に寮に戻っていったらしい。やはりサボりか。寮の場所を聞いてグリムと共に彼の姿を探した。

彼はすぐに見つかった。グリムが叫べば相手に気づかれ、エースは走って逃げて行った。
「どいたどいたー!」
「えっお、おうっ!?」
「そいつ捕まえて!」
他の一般生徒を巻き込んでしまうのは申し訳無いが、私の体力はそこまで多くない。使えるものは使うべきだと目元にスペードの模様のある男に叫ぶと、彼は狼狽えながらその場で何か考え始めた。
「何でもいいからぶちかますんだゾ!早く!」
「何でもいいからいでよ!重たいもの!」
そんなざっくりしたものでも出てくるものなのか。エースの頭上に大きな釜が出てきて、彼を下敷きにする。
「いーじゃんかよ。窓拭き100枚くらいパパっとやっといてくれたってさー」
「ならばお前がやれ。出来るんだろ?パパっとさ。」
「罰で窓拭き100枚って…一体君たちは何をやったんだ?」
何が起こったか酷く簡潔に説明したエースに、スペードの男は声を荒げて叫ぶ。
「…るせーなぁ。つーかお前、誰?」
「ボクはデュース。デュース・スペード。クラスメイトの顔くらい覚えたらどうだ?えーっと…」
「お前も覚えてねーじゃん。」
特大ブーメラン帰って来てますよデュース君。
さっさと戻って終わらせよ…う…あれ?
「あっ!毛玉がいない!」
「…あのクソ毛玉…三枚下ろしにしてやる…」
「怖っ!?」
エースが関係の無いデュースを巻き込んで、2人でグリムを追いかける事流れになった。
ごめんな。デュース。後でジュース奢ってやるよ。
エースがな。