化け物は強かった。
デュースは化け物によって投げ飛ばされ、エースも魔法を使って応戦したものの、思いっきり吹っ飛ばされた。
化け物が次に標的にしたのは、グリム。炎で包んでも化け物は全く効いていない。何処か弱点がきっとある筈だ、それを見逃してはいけない。ヤツの行動を分析…
「今、光った?」
化け物の背後、光っていたのは魔法石。
あれを掻っ攫って逃げれば、戦わずに済むんじゃないだろうか。ただ、化け物のサイズは大きくて背後に回れる気がしない。
「オイナマエ!ひひひひ、ひとまず逃げるんだゾ!このままじゃ全員やられちまう!」
「それもそうだな…一旦退こう」
鉱山から出て、先程の家に辿り着いた。エース、グリムの魔法は効かなかった、魔法練度は恐らくお粗末。どうすればヤツを倒せる事が出来るのだろうか。
「魔法石が目の前にあるのに、諦めて帰れるかよ!」
「はっオレより魔法ヘタクソなくせに何言ってんだか。行くなら勝手に1人で行けよ。オレはやーめた。」
「あぁ、そうかよ!なら腰抜け野郎はそこでガタガタ震えてろ!」
まーた懲りずに喧嘩を始めている。間に挟まれたグリムがワタワタしている位の気迫が、デュースにはあった。
「な、なぁ…デュース。オマエなんかキャラ変わってる気がするんだゾ?」
「ハッ!ご、ごほん!悪い、少し取り乱した。」
「もっと強い魔法とか使えないの?」
2人の話を聞くに、大がかりで複雑な魔法は訓練が必要らしい。思い浮かべた通りに魔法を使うにはかなり訓練が必要だそうだ。今年入った、しかも1日しか通っていない彼らは大釜を出したり、単調な風や炎を起こす位しか使えないだろう。
知識が無ければ魔法を使う事すら出来ない。知識があっても焦っていたら思い通りに使えない。
どうするべきか。考えていた時、また2人が言い争いに発展した。ああ、もう…!
「いい加減にして!そんなんだから歯が立たないんでしょうが!あーったく…」
今まであまり会話に参加してない私が、いきなり大声を上げた事にビックリしたのだろう。全員鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべていた。
「し、しかし…一体どうしろっていうんだ」
「作戦を考えよう、まず…」
”作戦”という言葉に反応したエースとデュース。2人は協力する事が相当嫌なようで、また喧嘩に発展しそうになる。が、
「入学初日で退学って、もっとダセー気がするのだ」
グリムの一言で考えを改めたのか、仕方無いと言わんばかりに2人は協力してくれる事になった。
「作戦を考えた。聞いて欲しい」

鉱山入り口まで移動した。
グリムが化け物の前に躍り出て、へっぴり腰になってこちらに走って来るので私と共に誘導を始める。
化け物は私達に拳を振り下ろし、間一髪避けながら洞窟から離していく。
「エース!」
エースとグリムの合わせ技。炎を風で巻き上げて化け物に攻撃した。意外に効いているようで化け物は怯む。
「デュース!」
「落ち着け…よく狙うんだ…俺が知る中で1番大きく…重たい…
 いでよ、大釜!」
やっぱ大釜じゃないか。
作戦は上手くいったようで、デュースが出した大釜に化け物は押し潰されていた。存外重いのか化け物は身動きを取る事も出来ないようで、今の内に魔法石を取りに行こうと叫び、鉱山内部に駆けた。
「マデェエエエエエエ!!!」
背後で化け物が叫んでいる。その内に見つけた魔法石を引っ掴んで背後を見れば、もう大釜を押しのけそうになっていた。
私達にしては動かす事の出来ないものでも、体格の大きい化け物は例外なのだろう。
「デュース!もっと何か召還して!」
「えぇっと、重たいもの!?
 い、いでよ!大釜!あとは、えーっと、えーっと、大釜!?それから大釜っ!」
大釜しか召還出来ないのかよ。多少は足止めになっただろう。
「今のウチにズラかるんだゾ!」
グリムの言葉で皆が走って逃げる。が、化け物の執念というものは凄く、あんだけ召還した大釜を全て押しのけて私達を追いかけてきた。
「くそ、このままじゃ追いつかれるっ…!」
さっきより動きが単調で、鈍間になっている。
「今ならやれる筈だ!」
「あぁ〜!もう!」
またもやエースとデュースが小言を言い合っているが、彼らの言葉に棘は無い。
3人が力を合わせ、時々私が指示を出して次々と魔法のコンボを決めていく。

化け物が、倒れた。
さっきまではあんだけ仲悪かったのに、すっかり仲良しになってハイタッチを決めている3人を見て、思わずクスリと笑ってしまった。
そんな私を見た3人が狼狽えながら言い訳している。
「って、言い訳すんのもダサいな。悔しいけど、オマエの作戦勝ち、かな。」
「そりゃどーも」
「ああ、オマエが落ち着いて指示を出してくれたからこうして魔法石を手に入れられた。」
なんか、物凄くむず痒いな。ここで冷静に対処出来たのが私だっただけで、別に誰でも出来た筈だ。
まあ、こんな時位は素直に受け止めても良いか。
「ン?コレ、なんだ?」
「さっきの化け物の残骸か?」
物凄く真っ黒な石が、地面に落ちていた。何だろう、これ。グリムが近づいて匂いを嗅ぎ、更には食べ始めた。
「ああこら、拾い食いはやめなさい」
ウッと声を出したグリム。まさか喉に詰まらせた?と思って居れば、彼の表情は途端に花開き、石の感想を言ってバクバク食べ始める。
「げーっ。やっぱモンスターってオレたちとは味覚が違うの?」
「…かもしれないな。というか…落ちている得体の知れないものを口に入れること自体ほとんどの人間はやらない」
はは、そのほとんどの人間から逸れた人間ですけど。孤児の頃の記憶を思い出して遠い目をする。
さて、帰ろうか。