デュースとグリムは魔法を使ってバラの色を変えていっているが、デュースは赤以外の別の色に、グリムは炎を出してバラを燃やしてしまう。
正直この2人に手伝わせた方がかえって時間が掛かるのでは?と思ったが口には出さない。
「つーか、薔薇は白いままでもよくね?綺麗じゃん。」
「こればっかりは伝統だからね。」
何でも無い日のパーティーでは薔薇は赤。バットに7つのグラミンゴ、ボールにハリネズミを使うクロッケー。春の庭でやる花のコンサートでは、白いバラを使用する。
変な伝統ばかりだとグリムが言う。ここまで規則がガチガチなのもかえって息苦しくなりそうだ。
「これはグレート・セブンの1人、ハートの女王が決めたルールなんだって。」
ハートの女王が決めた伝統。リドルという男は今までの寮長の中でも伝統を守ろうとする真面目な2年生らしい。それにしてもやりすぎだろう。
「ところで寮長のタルトを盗んだエースちゃん。お詫びのタルトは持ってきた?」
「え?いや、朝一で来たから手ぶらすけど…」
「あちゃ〜。そっかぁ。それじゃあハートの女王の法律・第53条『盗んだものは返さなければならない』に反してるから、寮には入れられないな。」
見逃したらオレまで首を跳ねられちゃう。そう言ってケイトはこちらにマジカルペンを向けてきた。
魔法を使えるデュースとグリムが応戦したが、倒しても倒しても無限に溢れるケイトの姿。遂には私達は寮から追い出されてしまった。
あの野郎、私達を使うだけ使いやがったな!
「じゃあ、お詫びのタルトを用意して出直しだな。放課後にでも…ハッ!!!やばい!!!」
デュースが叫ぶ。…あ、
「遅刻する!!!」
もう予鈴の時間は過ぎている。これはまずい。さすがに入学初日で遅刻などしたら印象が悪いだろう。それに、私とグリムは他の生徒に比べて1日遅れているし。
「何組なの?」エースの問いに「私達のクラスは1年A組だ」と告げれば、彼らと同じクラスのようで共に教室まで走った。
1時限目は魔法薬学。実験室まで移動する。クルーウェルと名乗る教師が担当のようだ。
「薬草と毒薬100種類の名前と見分け方をお前らの小さい脳味噌に叩き込む。」
草の見分けは得意だ。孤児として生きていた頃、死なない為にそこら辺に生えていた雑草が食べ物だったので人の身に害のある草をよく見分けていた。毒薬については…まあ追々覚えれば良いだろう。少しはあの頃の知識が役に立つだろうか。
2限目は魔法史。教室に戻って席に付く。トレインと名乗る教師が担当のようで、膝にはルチウスという猫を乗せている。
「君たちには、この世界に繁栄をもたらしてきた魔法についての歴史を学んでもらう。」
「オ”ァ〜〜〜」
猫煩いな。
別世界の人間が歴史を学んだ所で元の世界に戻る手がかりなんか掴めやしないだろうが…まあ、生徒だから仕方ないか。
3時限目は体力育成。運動場まで移動する。バルガスと名乗る教師が担当のようだ。
「魔法士たるもの、体力が無いとな。そんなわけでまずはグラウンド20周、次に腕立て伏せ100回!」
控えめに言って死ぬのでは???体力はキングスカラー家で訓練したお陰で若干付いたが、筋肉の付きにくい体質のお陰で微々たるものだ。…この授業が終わった後、死んでないといいけど。
休み時間、エースとデュース、そしてグリムと4人で並んで歩いていた。
並んで…
「あれ、グリムは?」
「あっ窓の外を見て見ろ!あの中庭を横切る毛玉は…」
「早速逃亡かよ…」
その場で頭を抱える。まーた監督不行き届きと学園長にボロクソに言われてしまう、彼に見つからない内に連れ帰らないといけない。
「ね、グリムを捕まえるの手伝って欲しい?」
「え、まじで?頼むわ」
「オレ、購買のチョコレートクロワッサン」
「なら、僕は学食のアイスカフェラテで手を打とう」
「まじかよ…はー…分かったよ…」
「交渉成立!んじゃ、ダメダメ監督生どのの尻拭いといきますか。デュースくん」
「ああ、エースくん。昼食が楽しみだな。」
こういう時だけ調子が良いんだから!異能力があればグリムなんて…無いものねだりをしても意味が無いし、約束をしてしまった以上仕方ない。
私は2人を引き連れて、中庭まで飛び出した。