裏切り

足早拠点に戻り今起こった出来事を話すも、1度持ってしまった不信感を払拭する事は出来ず、信頼を取り戻すどころか話すら聞いて貰えず適当にあしらわれてしまった。私が中也と会話をしている間にも、組織内では中也を切る事が既に決定されたようで、このままでは中也が羊から追い出されるだろう。それはなんとしてでも避けたい事だ。彼の為?いいや
―――私の為に、だ
中也が居ない間、何度も何度も評議会を開いた。一応、評議会のメンバーの一員である私を仲間はずれにするのは彼らの中でも心情的にあまり宜しく無いのか、一応その場に呼ばれるのだが既に中也を裏切る事は決定事項のようで、そのまま私を置いて話を進めていく。中也を裏切ったとしても仲間内の争いというのは避けれるだろうが、それだけでは明るい未来など存在しない。力の無い私たちはポートマフィアなり他の組織なりに襲撃されるのがオチだ、未成年で何も力を持ち得ない私達が生き残る事など出来やしないだろう。そこで、今後の自分達の身の振り方を提案する事となったのだ。
「俺達が今敵視してるのは、1番はやっぱりポートマフィアだ。あいつらは早めに叩かないと俺達の命が危ない」
「じゃ、じゃあどうするの?あいつら叩くにしても私達だけじゃ…」
「確かに、ポートマフィアの拠点を襲撃するにしても、1階すら突破出来ないのがザラだって聞いたぜ」
「良くて2階くらいまでだっけ…?」
「それじゃあどうすんだよ、攻撃しても死、守っても死。俺達の未来は真っ暗って事か?」
「いや、1つだけ手は無い事は無い。ずっと考えてたんだけどよ、GSSと手を組むのはどうだ?」
「じ、GSS!?」
「ああ、GSSの奴らもポートマフィアと敵対してるんだろ?お互いの目的は一緒だ」
「でも危険じゃない?話をするにしたって奴らの拠点まで行くだなんて…」
「確かにそれもそうだ」
「襲撃と勘違いされないようにも、まずは電話で交渉すれば良いんじゃないか?」
「あ、それ良いかも!事前に電話して話の約束取り付けたら襲撃だって思われないし、羊は青い帯付けてるから目印にもなるもの!」
「それなら行ってもいきなりバーンとはならないよな」
私はずっと下を向き、話に加わらないまま周りだけで話が進んでいく。これから私がどう動くべきか決める為にも、話の終着点だけは聞いておくべきだと話半分に盛り上がりを見せる彼らの会話に耳を傾けつつ、今後の身の振る舞い方を検討していた。いつもは積極的に案を出している私が、ずっと下を向いていたのが良く思わなかったのか、対面に座ってる白瀬が私の名前を呼んだので、評議会が始まってから初めて顔を上げて白瀬と視線を交える。
「そのシケた面やめろよ」
「え…」
「今まで仲間だと思ってた奴がいきなり裏切るとか考えたく無い、そう思うのは分かる。お前が1番中也と仲良かったから尚更思うとこはあるのも理解してる。でもよ、これが現実なんだ、受け入れろ」
「…うん、そうだね。」
先に裏切るのは一体誰なのだろうか。中也か、彼らか、―――私か。心に重い感情が広がりながらぐっと飲み込み、返事をしながら俯いた。先程までとの雰囲気とは打って変わって、シン、と静まりかえって重苦しい空気が流れる中、顔をゆっくり上げると、全員が私の事をじっと見つめていた。
「名前、大丈夫?」
「うん、ごめん。ありがとう」
「そ、それでどうするよ」
「もうGSSと手を組む方向で良いんじゃねえか?意義のある奴は?」
「…居ないみたいだね!じゃあ早速他の人にも連絡して、GSSに話つけないと!」
「GSSって異能力者居るのかな?居たら楽できそうなのにな〜」
「あー確かに!そもそもGSSの事ほとんど何も知らないな」
「んじゃ、提案した俺が話してみるわ。じゃあお前らは他の奴にこの事を報告!解散!」
ガタガタと音を立てて椅子から立ち上がる彼ら。その話の行方を見届けた私は、彼らの会話を思い出しながら眉間に皺を寄せる。そろそろ寝るかと立ち上がろうとした突如、椅子に座ったまま1つの考えが過ぎり、ぐるぐるその思考から抜け出せなくなった。
もうここは駄目だな。1つため息を零しながら、ゆっくりと椅子を引きその場を後にした