体調管理2

彼女の家に到着したので、彼女を抱き上げながら寝室に向かう。そういや風呂上がりだった、濡れてる髪をある程度乾かしてから、彼女をベットに横たわらせる。顔を真っ赤にして呼吸を荒げながら眠る彼女に、そういや何処かに冷えピタがあったはずだと探しにリビングに向かう。結構分かりやすい所に置いてたのでそれを引っ掴み、彼女の所に戻り前髪を掻き分けてそれを貼る。ヒヤリとした冷たさに、小さく声を出し顔を顰める姿が厭に艶めかしい。いやいや待て俺、まだ恋人関係でもない、その上体調を崩してる彼女に何を盛ってんだ莫迦。頭を振り邪な考えを払拭しようとするが、上手くいかずに目を閉じれば風呂場で倒れてる彼女の事が思い浮かんだ。おいおい何思い出してんだ、つーか裸なんて前に異能で小さくなった時に存分に見たし今更動揺するようなもんでもねぇ、その時も別に邪な目があった訳じゃない、ただ自分との身体の差に疑問に思って見ていただけだ、うん。誰に言い訳してんだ落ち着け俺、考えんな。
「ん…」
「!?」
「あ、れ…ちゅうや…?」
「お、おう。大丈夫か?」
「ここは、」
「お前の寝室のベットだ。覚えてねぇか?」
寝起きのせいか、熱のせいか頭がぼんやりしているようだ。何があったのか思い出せないと言わんばかりに、気怠そうに目を開いてこちらを見る彼女に「風呂場で倒れたんだろ」と言えば、合点がいったようで「ああ…」と呟き、そのまま目を瞑った。
「寝るか?」
「うんん…身体拭く」
「ん!?お、おう分かった。タオル持ってくるから待て、まだ脱ぐな、おい寝ぼけてんのか?」
「たおる」
「分かったから脱ぐんじゃねえぞ?いいな?」
のっそり起き上がり、俺が居るにも関わらず服を脱ごうとする彼女を制止しながらタオルを出す。こいつほんっと危機感というものが無いのだろうか。それとも俺がまだ男として見られて無いのか。後者の可能性の方が高いが結構アタックしてる俺的には微妙な気持ちになるので前者で頼みたい。それか熱でまともな考えをしてないか、だ。ベットの上で座る彼女にタオルを渡し、「終わったら呼べ」と一声掛けて部屋から出る。はぁ、ほんと身が持たねぇ。その場に座り込んで髪をグシャリと掴み、深く呼吸をする。莫迦みたいな思考がグルグル巡ってる時、ふと医者の言葉を思い出した。確か「栄養失調」と言っていたはずだ。飯を作ってる時に見えた冷蔵庫の中には確か上段の方に栄養ドリンクがたくさん入ってたのを思い出す。それに、ここ数日デスクで手に持っていたのは10秒でエネルギーチャージ出来ると謳い文句のゼリーだったはずだ。羊の時は子供という事もあって免疫が鍛えられていたのかもしれないが、そんな生活を送ってない成人した今、一般的な人よりも低い免疫力しか無いならそりゃ身体も壊す。ちょっと前に風邪引いた俺に口酸っぱく栄養のあるものを食べろと言っていたにも関わらずこの結果か、手が掛かるのは果たしてどちらなのか。とりあえず1週間ほど休暇をやって、栄養のある食べ物を与えよう。人に作るとなればしっかり作るのに、いざ自分だけとなれば手を抜くどころか1食位いいやと抜いてる事がある彼女の事だ、その間は晩だけでも毎日飯を共にすればちゃんと食べるだろう、具合が悪そうであれば俺が作って食べさせれば良い。彼女の机の上にある書類の山は…まあ、明日の俺が何か良い案でも思いつく、多分。首領にこの事を連絡をしなければと段取りを考えてると、部屋からドンッという音が聞こえた
「おい、名前大丈夫か!?」
「いってて…」
「入るぞ」
「うん」
勢いよく開けると、彼女は頭を抑えながら地べたに座り込んでいた。
「おいどうした、何があった?」
「お洋服取ろうとしたら転んじゃって…」
「ったく自分でやろうとすんじゃねぇ、危ねえだろうが。俺が取ってやるから寝とけ。パジャマか?」
「えっと」
「どうした」
「下着を、取りたいんだけども…」
「…」
彼女の肩を持ちながら立たせ、重心が覚束ないのでそのまま抱き上げてベットに座らせる。そういや、適当に引っ張って着せた服は上下どちらも俺のものだ。いや、決して彼シャツだとかそういう事を狙った訳じゃねえ。偶然だ偶然。パジャマでも取れば良いのかと思い聞けば下着との事で、そういや彼女はこの服しか着てなかった事を思い出す。…部屋に出よう。頭冷やすために一旦出よう。「着替え終わったら呼べ」と声を掛けて再度部屋から出た。

「いやあ、本当面目ない…」
「構わねえ」
あの後、ちゃんと着替えれた名前は俺の事など忘れてスヤスヤ眠りこけたようだ。きちんと睡眠が取れたのであればこちらとしては問題無いのだが、俺をそのまま廊下にほっぽりだしてしまったと名前はベットに寝転んでは申し訳なさそうな顔をしながらこちらを見ていた。そんな彼女の頭を撫でながら、きちんと休んでおけと声を掛けて部屋から出た。
さて、彼女の艶めかしい姿を脳裏で思い出してしまう男の性をどうすれば善いだろうか。とりあえず一旦、一旦頭を冷やそうとトイレに向かうのであった。