6-2.彼はそれを止めることができない

※虎杖視点

箱の中、正直ちょっと狭かった。
でもまあ、みんな驚く顔が見られるなら悪くない。
蓋が開いた瞬間、外の光が一気に差し込む。

「はい! おっぱっぴー!!」

いつも通り、元気よく言ったつもりだった。
ざわっと空気が揺れるのがわかる。
伏黒の顔が固まってる。
釘崎は、しかめ面をして口開けたまんま。
あれ?何か思っていたのと反応が違う。
五条先生だけが横で楽しそうにしてるのを見て、「もしかして、ドッキリ失敗したか?」って、そこで思った。
ワゴンから出て、みんなの顔を一通り見回す。
その途中で、ふと目に入った。
時雨。
立ってはいる。
でも、動いてない。
いつもみたいに、表情がないだけかと思った。
そういうやつだし、驚いて固まってるんだろ、くらいに。

「時雨?」

名前を呼んだ。
その瞬間だった。
時雨の肩が、小さく揺れた。
ほんのわずか、息を吸うみたいな動き。
次の瞬間、目に溜まっていたものが、一気に零れ落ちる。

――あ。

頭が、真っ白になる。

「え、ちょ、時雨?」

泣く、っていうより、堪えてたものが壊れた、って感じだった。
声を出そうとして、出なくて、それでも涙だけが止まらなくて。
それを見た瞬間、俺の目には、泣いてる時雨しか映らなくなった。

「わ、悪ぃ! ごめん、ほんと、ごめん!」

何に謝ってるのかも、よくわからない。
でも、とにかく謝らなきゃって思った。
こんな顔、初めて見た。
いつも淡々としてて、痛いのも怖いのも黙って飲み込むやつが、こんなふうに崩れるなんて。
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。

――俺、何してんだ。

冗談のつもりだった。
みんなを驚かせるだけの、軽いノリのはずだった。
なのに。

「なぁ、時雨……頼むから、泣きやんでくれよ……」

自分の声が、やけに情けなく聞こえた。
どうすればいいかわからない。
手を伸ばしていいのかも、わからない。