任務の割り振りを見たとき、五条悟は一瞬だけ、ほんのわずかに目を細めた。
掲示された一覧。
現場担当、後方処理、帳の調整、残穢の解析。
その中に、当たり前みたいな顔で並んでいる名前。
五条悟。 それから――久良伎リョウ。
またか、と思う。
偶然と言うには、ここ最近は少し続きすぎている。
「……ま、楽でいいけど」
そう呟いて、紙から視線を外す。
リョウの方を見ると、彼女はすでに端末を開いて、内容を確認していた。
いつも通りの、仕事の顔。
特に何かを気にしている様子もない。
「今回も一緒ですね」
淡々とした声。
「だね。最近多いよね」
五条がそう返すと、リョウは一瞬だけ考えるように視線を落としてから、
「……たまたま、ですかね」
と、少しだけ曖昧に笑った。
――その「たまたま」が、何回目か数えてみたらいいのに。
そう思うけど、口には出さない。
現場に向かう道中も、特に変わったことはなかった。
いつも通りの連携。
いつも通りの距離感。
必要なことだけを、必要なタイミングでやり取りする。
ただ、ひとつだけ。
補助に入っていた窓の職員が、特に確認もなく、自然にこう言った。
「では、五条さんと久良伎さん、こちらお願いします」
二人まとめて。
まるで、最初からセットであるかのように。
リョウは一瞬だけ、きょとんとした顔をしたけれど、すぐに
「はい、わかりました」
と頷いた。
五条は、その横顔をちらりと見てから、何も言わずに前に出る。
作業自体は、何の問題もなく終わった。
連携もスムーズ。
むしろ、余計な説明が減って楽なくらいだ。
後処理の途中、リョウが小さく呟く。
「……最近、こういうの多いですね。五条さんと一緒の現場」
「ん? そうだね」
「偶然にしては、ちょっと続いてる気もしますけど……」
そこまで言って、リョウは少しだけ首を傾げる。
「でも、五条さんの現場って、後処理多くなりがちですし」
理由を探すみたいな言い方。
五条は、ほんの一瞬だけ笑ってから、
「まあ、都合いいんじゃない?」
とだけ言った。
――都合がいいのは、現場だけじゃない。
そう思ったけど、それも言わない。
帰り際、事務的な確認をまとめて受け取るときも、
「では、この二人分で」
と、ひとまとめにされる。
誰も、わざわざ言葉にはしない。
でも、扱いはもう、完全に「一組」だ。
リョウはそれに気づいているのか、いないのか。
気づいていても、深く考えないようにしているのか。
五条は、彼女の横を歩きながら、内心で小さく息を吐いた。
――外堀は、ずいぶん前から埋まり始めてる。
当の本人だけが、たぶん、その真ん中に立ったままのつもりでいる。
「……ねえ、五条さん」
歩きながら、リョウが何気なく言う。
「次の任務も、たぶん一緒ですよね。配置的に」
「っぽいね」
「最近、本当に多いですね」
それは、ただの事実確認みたいな口調だった。
五条は少しだけ視線を逸らしてから、何でもない風に答える。
「まあ、相性いいんじゃない? 僕ら」
リョウは、ほんの一瞬だけ言葉に詰まったように見えたけど、
「……仕事の、ですか?」
と聞き返してきた。
「さあ、どっちだろ」
軽くそう返して、五条は歩調を少しだけ速める。
リョウはそれについてきながら、少しだけ不思議そうな顔をしていた。
――ほんと、無自覚って怖い。
周りはもう、とっくに「そういう目」で見ているのに。