夕方の駅前は、人の流れが少しずつほどけていく時間帯だった。
任務の後処理を終えて、五条とリョウは並んで歩いている。
会話の内容は、相変わらず仕事の延長みたいなものだ。
時々、沈黙も挟まれる。
けれど、不思議と居心地は悪くなかった。
「あ……」
歩いている最中に、リョウがほんの少しだけ足を取られた。
五条は反射的に手を伸ばしかけて、途中で止める。
「大丈夫?」
それだけの一言。
それだけなのに。
リョウは一瞬、言葉に詰まったように視線を泳がせ、それから小さくうなずいた。
「だ、大丈夫です……すみません」
視線が落ちる。
頬が、わかりやすく赤くなる。
……ああ。
五条は、そこでようやく腑に落ちた。
これまで何度か感じていた、妙な間の取り方。
目が合ったときの、ほんの一瞬の硬さ。
距離が近づいたときの、わずかな緊張。
全部、同じところにつながっていた。
驚きよりも、静かな納得の方が先に来る。
胸の奥が、ゆっくりと温度を変えるのがわかる。
でも、それをそのまま表に出すほど、五条は無神経じゃなかった。
「無理してないならいいけど」
「はい。平気です」
リョウは、まだ少し落ち着かない様子で、書類のケースを抱え直す。
駅の改札が見えてくる。
「じゃあ、ここまでだね」
「……ありがとうございました」
そう言って、リョウは人混みの中に消えていった。
五条はその背中を見送りながら、ゆっくりと息を吐く。
――これは、もう、見なかったことにはできないな。
彼女の仕事も、立場も、選び方も。
全部ひっくるめて。
軽い気持ちで触っていい話じゃない。
そう思える程度には、もう――
五条の中で、答えは出てしまっていた。