7.彼の答え

夕方の駅前は、人の流れが少しずつほどけていく時間帯だった。
任務の後処理を終えて、五条とリョウは並んで歩いている。
会話の内容は、相変わらず仕事の延長みたいなものだ。
時々、沈黙も挟まれる。
けれど、不思議と居心地は悪くなかった。

「あ……」

歩いている最中に、リョウがほんの少しだけ足を取られた。
五条は反射的に手を伸ばしかけて、途中で止める。

「大丈夫?」

それだけの一言。
それだけなのに。
リョウは一瞬、言葉に詰まったように視線を泳がせ、それから小さくうなずいた。

「だ、大丈夫です……すみません」

視線が落ちる。
頬が、わかりやすく赤くなる。

……ああ。

五条は、そこでようやく腑に落ちた。
これまで何度か感じていた、妙な間の取り方。
目が合ったときの、ほんの一瞬の硬さ。
距離が近づいたときの、わずかな緊張。
全部、同じところにつながっていた。
驚きよりも、静かな納得の方が先に来る。
胸の奥が、ゆっくりと温度を変えるのがわかる。
でも、それをそのまま表に出すほど、五条は無神経じゃなかった。

「無理してないならいいけど」
「はい。平気です」

リョウは、まだ少し落ち着かない様子で、書類のケースを抱え直す。
駅の改札が見えてくる。

「じゃあ、ここまでだね」
「……ありがとうございました」

そう言って、リョウは人混みの中に消えていった。
五条はその背中を見送りながら、ゆっくりと息を吐く。

――これは、もう、見なかったことにはできないな。

彼女の仕事も、立場も、選び方も。
全部ひっくるめて。
軽い気持ちで触っていい話じゃない。
そう思える程度には、もう――
五条の中で、答えは出てしまっていた。