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ノイジー、いや、クレイジーな爆音が響く。
騒然とした。
ガラスが割れた騒音が始めか、壁の爆音か足場は衝撃に場が雑踏。
身を屈めてその場に立つ不可能が先立つ。
音が散ったその壁から長い黒髪の女が大砲のようなものを片手に担いでいるのを誰もが確認し「なんだ、」と「レアリー!?」が混じる。場の正体を認識する速度で女はかつかつ、歩いてくる。
あたりに一人、セドリックの護衛の男が気絶していた。
突然な状況を理解は出来ないが、まず女はスレンダーな、シャツにタイトな黒いパンツと言ったラフさだ、人物認識に唖然に眺めるしかない。
両腰にハンドガンを下げている。
女の後ろからは一人、黒髪で細身の…トレンチコートの人物が拳銃を構えている。
女の碧眼が冷たくこちらを睨み付けては「Hello Rat.」と罵ってこちらを見下げ大砲を捨てた。
…ゲリラでしかない。
所謂あの捨てられた大砲は…サバイバルゲームでしか見たことのない「ロケットランチャー」と言うやつではなかろうか。
と譲二が唖然と行き着いた頃には「What tell me!!」と投げ掛けるセドリックは咄嗟に護身のリボルバーを手にしていた。
壁がぶち抜かれたドアから入ってきた日本人5人のどよめきで譲二は一気に我に返る。
「ミスター・セドリック」
女は呼んで、ホリスターから銃を抜く。
銃身は黒光りしている。
「な、なんなんだお前!」
「そいつを寄越してもらおうか」
「やべぇどうなってんだ湯島」
と聞こえる日本語に譲二は少しの現実を見つけるのだが「シャルゥァップ」と巻き舌で女に言われては黙るしかない。
「しゃらっぷ…」と島田は唖然とする。
…この舌使いはもしや、ネイティブアメリカンではない、イタリアか、ドイツか、ロシアか、いずれにしても日本語は通じないだろうが、横にいる男か女か不明であるトレンチコートはアジア、なんなら日本人ではないか。
だが白々とクールにハンドガンを手にしていた。
「政治家はお友達を選ばなきゃならないな、ミスター・セドリック。
さぁてこいつらは誰だ」
黒い銃口をセドリックに向けじわりじわりと近付く女は冷たくも譲二と島田を横目で見る。
セドリックは「なんなんだおい!」と吠えるが、女ははぁ、と呆れたようにポケットからタバコを取り出し煙を吐いた。
「メリケンの小便ガキがそのパラベラムでオナりてぇと泣き喚いてんだよミスター・セドリック。知ってんだろ?」
「は、」
「お友達を忘れちまったか?博愛ファックのイカれた金持ち坊っちゃんをよ」
「まさか、」
「ああ、そうだ」
女は腰を抜かしたセドリックに近付いているのだが一人残った護衛も沸く。
銃声とほぼ同時に護衛は真後ろへぶっ倒れた。
白目を剥いて額に1つ穴を開けたアメリカ人が譲二の真横に転がるのだから「ひぃぃい」としか声が出ない。
トレンチコートが女を護衛したようだった。
「グッジョブローウェル。めんどいから猿共もやっちゃってー」
女にとっては軽いこの場。
流石に「ヤバい死ぬ」という危険信号は譲二にも出るのだが、まず女は腰抜けセドリックの股間を踏みつけ断末魔が流れる、
うちに後ろで3回分の銃声を聞き「あと3人…」と譲二が心の中で無駄なカウントをすることしか出来ずにいれば、セドリックが手放し転がってきた銃、更に女が持っている銃を譲二に向け「おい猿」。
泣きそうになるしかない。
「てめぇは一体どこの差し金だ」
え、
という声すら出ない。
だが女は「けっ、」と笑い、「さっさと寄越しな」と、譲二を脅迫するように銃痕を残した。
「はは、ぃ、」と反射でその銃に手を伸ばすに至る。
「ちょ、湯島」
「Save your breath.
You don’t want to be dead, Right?」
「……は?」
尚更怖かったらしい。「ふぅぅ…、」と声にならない声で島田が女に護身のマカロフを向けてしまったが最後、「Fuck.」という低い女の声と銃声。
奇声を発した島田の手はマカロフと血とふっ飛び舞いスローモーションのような目前。さらに女は島田を踵落としで蹴り飛ばし、流れでマカロフを蹴り床上を滑らせる、鮮やかな動作。
島田は半死状態で床に倒れ、これはテロかと譲二が肝を冷やした。
「そんなオモチャで何しようってんだ?」
冷たい泣き黒子で女が譲二に「死ぬか?」と告げた。
これ、死ぬかもしれない。
身に迫った危機に「あの、凄く殺さないでください」と、女に懇願するしかない。
「あ?」
「お金もアリマス」
「…全部詰めろっつってんだろ猿」
「助けてくれたら詰める」
「早くしろよ」
「私が早くしたら殺さないでください」
「うるせぇな穴開けるぞ」
「えーと、死にたくないホント、マジ、最上級。ワタシナニもシラナイホント」
「関係ねぇけど死ぬか?」
言語を理解しねぇ、この外国人。何語とかでもなく、普通に話を聞かねぇ。
最早テロ、というかカツアゲ。
一寸先が闇なのだが「うぅぅ怖いよ…」と譲二の震える手で拳銃は汗ばんだ。
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