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「ウチは神道仏道とどちらも働いているから本宮なんですがぁ、藩政策から仏門は廃止の方向なんですよ守田宮司。そしてウチが水神を誇る本宮として奉納祭をやるのはご存じだと思うのです。しかし宮司の娘はまだ小ぃさいし、今年の水神の人材は探していましたから、南條さんがお宅へ訪問したのならどーぞそれは守田様が面倒を見てくれるでしょう!お弟子さんをお貸しいただけますね!南條さん!」
「はぁぁ!?」が朱鷺貴と守田でハモる。何を言われてるのかわからないのは二人ともそうだったらしい。
「ははぁ、なるほどでありますな」
と、唯一理解を示したのは翡翠だった。
「トキさんはその…守田さんのお寺に厄介になり、わてはこちらさんに厄介になるいうことやろか。
トキさんが当てられなかったんはお坊様がこちらで働いているからで、それはここの威厳やった。せやからトキさんを連れてきたんは守田さんとこの威厳もあった言うことですな?」
「ぐっ…」
守田が黙り、五条の表情が嬉々とする。
翡翠は冷めた目で二人を眺め、朱鷺貴を見ればうっすら笑いかけた。
「わてはここに必要みたいやトキさん。あんたは守田さんとこが必要としてるらしいんやけど」
それを聞いた朱鷺貴は漸く双方の食い違いを理解し、一瞬ぴくっと眉を寄せるくらいの反応を見せた。
それを見逃さない翡翠はつまらなそうに、胡座をかいた膝で頬杖を付き、神職二人を薄笑った。
「わては少々具合が悪いんです。標高が高いと起こる体調なんやけど、さて、祭事はいつやろか」
「明日…やろうかなぁ…」
そして五条が焦り出す。
「元の務めているお方はどないしてるんですか」
「この調子だと、娘様に…」
「女の方もいらっしゃるんですね。神職は自由やねトキさん」
あ。
「…みたいだなぁ」
若干怒っているね君、諸々含めて。笑顔が怖いよと朱鷺貴は苦笑した。
「わては山に登るとき、言うたと思うんやけどトキさん。お山は登るが灼然かと」
「…はい、はい…」
なんだ。
今度は旅人二人がどうやら、何故だか気まずそうだぞと漸く神職二人が気付き始めた。
「まぁ、霊験なんてトキさんには仏やけどわては見世物は得意ですえ。どうやろトキさん。適材適所やないかしら?」
久々聞いたぞ、この感覚。里を離れるといかに京が隠れ嫌味の里かわかるなぁと感心。
「…怒るなよ翡翠〜、ごめんて!」
ふいっと翡翠は冷めた目で顔を背け「別にぃ」と朱鷺貴に言った。
「まぁ神さんに勤めるんは立派なお役職でっしゃろ」
態度で漸く守田と五条は考えている様子。これは受けてくれるかくれないか、よくわからないなぁという方面で。
「別に大して立派じゃないから、な?な?俺を見ろ翡翠。偉くないでしょ」
「さぁ?」
女子かよ〜、なんで野郎に媚びてんだよ俺〜…と朱鷺貴は情けなくなる。確かに無理は強いたけど、案外元気じゃないか、はぐっと抑え込む。
「あの…それで」
「五条さん言いましたっけ。
取り敢えず堂が近いのでこいつが回復するまで待ってくれません?従者の負傷で申し訳ないのですが、何分我々南方育ちでして。お恥ずかしながら寒いんです」
「あ、あぁ…はぁ」
よし、取り持ったぞと一安心するも、「その場しのぎやね」と、今度の露骨な翡翠には「事実だし」と、流石に朱鷺貴はムスっと返した。
「従者よナメるでない。それでお役の手を抜こうなんて思ってるのかお前」
なるほど。
実は今までめちゃくちゃ我々は嫌味を連発されていたの?と、朱鷺貴のどちら取らずな物言いに五条は理解し始め、
「ぶ、無礼いたしました」
と謝る。
決まった。宿はどうやら本宮らしいと朱鷺貴は守田に、挨拶代わりに頭を下げる。
それを見ては「よいしょ」と翡翠は何事もないように立ち上がり、案内される朱鷺貴の後ろをついた。
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