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 気まずく二人で楼を出て。
 気まずく二人で黙って歩いた。
 翡翠の、黙りこくっている頑固さに耐えるしかなく、
 朱鷺貴の、依然としている負けん気に耐えるしかない。

 こんな時はどちらかが切らねばならぬが、それがわかったらこの間に端から意味などない。

 朱鷺貴は待つと言ったのだし、翡翠も着いて来ているのだから、領域や気位など、本当はすぐに融解するはずだ。
 このままでいれば逃避行と変わらない、わかってはいるから間が経つにつれ変に拗れて重くなってしまうという自覚だってある。

 男児の性格とは難儀だな、こんな時にそう思えた朱鷺貴が「何があった」と、結局気の短さで促すしかない。

「…見てわかる通りです」

 そうか、これじゃぁ何も変わらないなと、言ってしまってから思う朱鷺貴は「そうか」とだけ返した。

 非常に焦れったいが川までの辛抱かと黙々と歩いていたが、いつまで経っても要するに、互いに言葉を失ってしまったのだ。

 餓鬼の喧嘩より拗らせていた。

 何か間違ったのだろうかと考えるには充分な距離だった。
 互いに、何を間違ったかと言えば性分でしかないなと気付くまでに、橋渡しの場に辿り着いた。

「上方からかい、お薬屋さん。
 今日はもう、おしめぇだよう。明日の朝来な」

 橋渡しにそう言われてしまった。

 渡れない距離ではないのだろうが、水流は少し早い。そんなものなのだろうかと考える。氾濫でも、するのだろうか。綺麗でもない川だし。

 運び屋も確かに、ぼちぼちと引き上げて行くようだった。

 縁にぼすっと、翡翠は朱鷺貴の隣で胡座をかいた。薬箱は、朱鷺貴とは反対側に置いたらしい。そして片手で頬杖をついて川を眺めているのだった。

 根負けしそうだよ、まったく。

 朱鷺貴もそれならばと、隣に胡座をかいて溜め息を殺す。

 やはり河川の風は寒い。
 身震いして「くしっ、」と軽くくしゃみをした朱鷺貴を横目に見て、仕方ないなと翡翠は羽織を一枚脱いで肩に掛けた。

 泣き黒子の方の目が、ちらっと翡翠を見るのだから、「すませんね、トキさん」と謝るしかないのだが。

「…謝ることかもわかってねぇから受け取れないんだが」

 羽織を返せば「謝ることでしょうよ」と、呆れたように突き返した。

「あんたの面に泥を塗りましたから」
「別に。唾は吐きかけられましたけど 」
「あぁほらね」
「俺はお前があの侍を殺さなかったならまぁ良いかと」
「偽善もお人好しも過ぎればしょうもないことですな」
「…どーしてそうひねくれてるかなお前は」

 全部を信じられないのはどうしたもんかな。
 いや、全部なんて信じなくて良いだろうよ、もう少し自分を信じたら楽なんじゃないかねぇと、遊女の耳元に突き立てた刃の光を思い出した。

 …そうでもないか。

 託すか捨てるかは変わらないのかもなと、そこだけ少しわかってやれた気がしたとき、翡翠が着物を脱ぎ、武器を捨て襦袢のみになり、それらを朱鷺貴に預けてきた。

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