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リビングキッチンに戻ったその場で、冷蔵庫から出した納豆巻を投げて寄越された。
「食いもん投げんな変態」
不服に睨んでやれば「はいはい」と、照井に肩を抱かれ、少し前まで大人の場所だったソファに促される。
生ぬるくて気持ち悪い、
「でさぁ、悠」
のも一瞬だ。
何に対しての「でさぁ」かは分からないけど納豆巻の包装第一段を開けた。これを剥いて、いや、丸めるのかな。どうやって食うんだっけこれ。
「ホントに何も思い当たらないの?」
あ、海苔が飯についた、ん?
飯まで包まれてるの、これ。めんどくさ。これ手間かかりすぎじゃん。
「悠?」
飯の方の包装を剥いて…
と一人まごついていれば「なにしてんの?」と言われたが無視をした。
「あーはいはい」と手を出されたのでおとなしく照井に渡せば、「それでさぁ、」と言いながら海苔の方の半分の包装を抜き、包装は邪魔にされテーブルに置かれる。
「何か嫌なこと」海苔を広げて、「あったんじゃないかって」あ、飯は真ん中で剥くんだ。「思ったんだけど」出てる海苔へころころころ…。
「ねぇ悠」
「ん?」
納豆巻は俺の元に戻ってきた。
「聞いてなかったでしょ、ちょっと、」
「あごめんごめん一切聞いてなかったわ。何?」
「…正直だしマイペースだよねぇ悠は。なに?そんなに見るやつか?これ」
「いや、そういうやり方なんだぁって、いただきます」
齧りついたらパリッとした海苔。コンビニのやつってこれが美味い。
「…一口が小さいよね。もういいや。美味しい?」
頷いた。照井はにやっと笑いながら「いいなぁ納豆巻は吐かれなくて」とか言われたので軽く肘打ちをしてやった。
「冗談じゃんか、まぁ初なところは可愛くて好きだけど」
「ううはいは変態」
「食べながら喋らないの。変態以外わからなかったからいいけど」
無視。
こいつアホすぎるから嫌い。
久々に食ったな納豆巻。ちょっとはまりそう。後ろからも食ったほうが零れずに済むのかな、これ。
「まぁいいや静かになったし。悠、俺一応心配してるんだからね」
はぁ?
横目で見れば「その可愛くない目付き怖い」とほざきやがる。うるさいな、この残りを口に突っ込んで喋れなくしてやろうか。
「…最近嫌なこと減ったの?今日はどうしたの」
「…別に」
飲み込んでからちゃんと喋った。
…本当に突然だった、というか前後の記憶が曖昧なんだ、仕方ないだろう。
「ハルは貧血って言ってたけど」
「あぁ、起立性貧血で…電車降りる直前くらいは記憶ある…ような。ここは混濁してたな。
多分、そんでドア開いた瞬間はなんとなくハルだったんじゃないかな」
「うーん…、そんな混じって変わっちゃうのっていままで」
「ハルが俺を食ってるんだよ、きっと」
言ってから「ん?」と照井は言う。
確かにいままで、あんまりなかった。
「潮汐破壊を始めている。きっと俺はそのうちロッシュ限界に達し、バラバラになって消えてなくなるんだろう」
照井は前屈みになり、物凄く険しい表情で「う〜ん…」と唸っている。
まぁ、他人にわかるわけが「…なんちゃら破壊って、なに?」…は?
は?
「え、そこ?」
「いや精神学用語にそんなのあったっけなっていま考えてるんだけど」
「天文学用語だけど」
「んん?」
バカなん、こいつ。
「潮汐破壊ってのは、衛生と惑星がそれなりに…近いとき、」
あ、ダメだ。
じわじわ地味にツボった。
「ふ、あの、ひっひ…!」
「え、」
「ちょっ、待ってたんま無理…」
暫く少し残った納豆巻を手にしたまま腹を抱えてしまった。おかしい。天文学取ってなかったのかこのおっさん。別にいいけど若干ズレている。
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