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手を振る間もなかった。
パトカーを見送っていると、後ろから肩を叩かれる。
政宗がタバコを一本咥え、親指で捜査車両の方を指した。
確かに凄くタバコが吸いたい。
促されるまま潤と二人で政宗についていき、車の前でタバコに火をつけた。
「おつかれさん」
「おつかれ」
「お疲れさまです。
…タバコ、辞めたって聞きましたけど」
「あぁ、辞めてた。解禁だ」
「黒田くん、よく考えたら警視庁なのに…知り合い?」
「ああ。一時期預かっててな」
「へぇ…」
「黒田って、さっきの眼鏡だっけ?」
「そうだよ」
煙が昇る。
あぁ、終わった。
いや、まだまだ仕事は残っているけれど。
「久しぶりだな…」
「もうこんな日は、来ないと思ってたけどね」
「…そうだな」
ある意味、来ないで欲しかった。
「お前らが元気そうでよかったよ」
「そりゃぁ…元気でいないとね。
お前は死んだかと思ってたけどね、流星」
「…残念ながら」
「なんで…」
そのあとは言わない。
言いたいことはよくわかる。
「なんでだろうな。まぁ、上からの命令だよ」
「出世したもんだねぇ。お前経歴見たら最早人間じゃねぇよな」
「…そうでもねぇよ?海外満喫だよ」
「よく言うよ、クソったれ」
「流星、」
少し悪くなった雰囲気に、政宗が割って入る。
この感覚も懐かしい。
「…あまり無理はすんな。日本には、俺も潤もいる。わざわざ海外でやらなくてもいいじゃないか」
多分、政宗は大方把握しているのだろう。俺が敢えて自ら海外を行き来していることを。
海外で、何をしているかを。
「…別に無理はしてないですよ」
単純に俺には日本《ココ》は居心地が悪いだけだ。
「あんたも、今の方が居心地が良いんだろ?それと同じだ」
「…お前には掛けてやれる言葉がないが…。
今日は、楽しかったよ。久しぶりにお前の純粋さを見た」
そんな真っ直ぐに言われると。
「…なんて返したらいいんだか」
「…そういえば、お前らこれからどうすんだ?」
「…まぁデータと結果報告までが今回の任務だからね。また元に戻るんじゃないかな。
そうなると流星、お前あのガキどうすんの?」
「あぁ、伊緒?」
「うん。さっき一応警察病院に連れてかれたけど」
「…そうか」
「お話し中、失礼します…!」
後ろの捜査車両のドアが開いた。猪越さんの顔に焦りが見える。
なんだろう。
「お疲れさまです」
「お疲れさまです。
ただいまよろしいですか?」
「はい、何かわかりましたか?」
「わかったというか…たった今連絡が来ました。
先ほどの立て籠り事件のホテル『R'e chanteur』が…。爆破されたとの情報が入りました」
「えっ…」
それって…。
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