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向かうのとは別方向から爆発音がした。
すると入る電話。伊緒が取ると、「政宗さん、愛蘭さんが」と言ってケータイを寄越してくるので、不審に思いつつ受けとる。
「変わった。どうした?」
『マトリ捜査車両との通信が途絶えました。今ご一緒にいらっしゃいますか?』
「…いや。マジか」
『原因は、わからないのですが、まぁ、こちらのケータイに繋がってよかった。原田さん、ケータイなら繋がりますかね?それとも…』
「…わからんな。
まぁいい。とっとと爆弾処理しよう。確認出来るのなんて…ないよな。
機捜隊はどうなってる?」
『爆弾処理班と、現場の救護班のようです』
「そうか。あっちは?」
『あっちはあくまで警視庁管轄になったようですね』
「うーん」
何故だ。
「わかった、ありがとう」
電話を切って立ち止まる。
「政宗さん?」
「爆破された場所は、右端、左端と爆破されている。予想なんだがこれ、実は誰もいないようなところなんじゃねえかな。
だとすると、残された人間は集中して逃げ込む。後ろか正面だ。
俺たちが今入ってきたのは裏口だな」
「そうですね」
「その辺、なんかあるか?裏口って言っても広いな」
「大学に人を閉じ込めたい、この思考回路なら次の爆破は単純に、すぐ、裏口と正面両方」
「政宗さーん!」
霞がふと、裏門、先程潜って来たまだ車すらある門辺りを指差して言う。
「あの門に、チカチカ光ってるのあるんですけどカメラですかー?」
「は?」
振り返れば。
霞が指した方が正直よく見えない、ぼやけて。しかしまぁ、カメラもあり得ない話ではないが。
「撃ってみよー」
「は?」
霞、懐からごっつい黒光りしたタラウスを取りだし、銃口を向けた。
何故か車、走り去る。危険を察知したか?いや、じゃなくて。
漸く目を凝らして見えた。不自然に赤く点滅する何か。
「ま、待った霞ちゃん、ちょ、」
「へ?」
ぱーん。
そして。
門がすっ飛び、凄まじい爆風が辺りを包む。思わず目をつむり、身を守るように顔を腕で覆う。咄嗟に息も止める、てか熱い。熱すぎる。
はっとして、
「ぐへぇ、に、にげ、るぞ二人ぃ!」
政宗は叫ぶ。また噎せて、門とは逆方向か最早わからんが三人揃って猛ダッシュした。
煙がなくなって来たところで立ち止まり、息を整え、
「おい霞ちゃんんん!」
思わずツッコミを入れずにいられない。
「おぇぇぇ、き、気持ち悪ぅ…、メイク台無し」
「あぶねぇよお前ぇぇ!」
「だって、おぇぇ、み、水ぅぅ」
「知るかぁぁ!てか」
「こここ怖いぃぃ。|卜《うら》さん怖いぃぃ、」
「化け物級だなお前。流星が買うのもわかるわ。
普通やらない普通やらない」
「けど処理出来た?」
「処理じゃねぇよ誤爆だよ取り敢えず入り口!正面に試しに行ってみるぞ!
俺の読みではあと正面だ。これなら、一気に爆破してあとは通路を塞ぐことも出来る」
「なるほど…」
「取り敢えず急ぐぞ!
人質にしたかったパターンなら、今の誤爆は早かった、つまりだ。
正面に爆弾があったとすると、同時に爆破したかった、しかし裏門が、先に爆破してしまった、そう考えると」
「急いだ方がいいっすね」
「死者が出る。愛蘭に連絡してくれ。フェイクなら最後の一発、毒薬の可能性だってある」
「マジか」
「…霞はあの事件いなかったからな。
今はなにより全員逃がすのが先決だ」
しかし前回パターンは。
確か毒薬による死亡者は警察組織のみだった。
「…伊緒、霞」
「…はい」
「なんですか」
「…お前らまず先に行け。取り敢えず爆弾は俺のが詳しい」
「…あんた、死ぬ気ですか?」
「いや、やだね。
なんとかする。しかしまずは」
「え?何が死ぬ気なの?伊緒ちゃん」
「…霞、」
あっけらかんと、しかし不安そうに言う霞に政宗は声を、掛けられない。だが。
「…俺はあの事件の人質だった。
あの事件、毒薬爆弾で死んだの、警察組織の人間だけだ。人質は、一般人はみんな助けてくれたんだ」
「はぁ?」
「あとから救護に来た警察組織、現場検証をしていた人たちが」
「そんなのって…!」
「だがな霞ちゃん、」
「ふくぶちょー、おかしい、
それってだって、あんた一人、」
「違う、そうじゃない、」
「卜さん、落ち着きましょう」
伊緒が、霞を宥める。
そして政宗を睨み付けた。
「俺と卜さんにはそれ、出来ないんですか、副部長」
「勘弁してくれよ、そうじゃなくて」
「いいです。一人でカッコつけてやってください。
ただし。
死んだら殺します。起こしに行きますからそのつもりで張って帰ってきてくださいね」
まぁ、なんて。
「行きましょう卜さん。あの人寝坊癖がタチ悪いだけですので。
大丈夫です。どうやら部長と監督官の葬式やるらしいので、喪主で。まさか毒薬程度で死にませんよゴリラだし」
しかしまぁ…。
「可愛くなくなったなお前…」
「その役は卜さんにあげるんです」
とにかく今は。
「俺たちは先に行きます。あんたはテキトーによくわかりませんが仕事してください。breck aなんとか。では」
まだ俯いている霞の肩を取り、伊緒はそそくさと、裏口とは逆だろう方向に歩いて行った。
今時の若いのって。
しかしまぁ、
「ふっ、」
一人笑ってしまった。
「…死ねるかアホ」
見守るように。
しかし考えれば方向は一緒。
政宗も、後ろから保護者のように二人について行くことにした。
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