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 現場は騒然とした余韻を残しているような、妙に危うい雰囲気だった。
 そもそもが、機捜隊員が2人ほど、門番のように立っているのと、覆面が1台あるだけの状態なのだ。

「機捜隊ねぇ…」

 潤がポツリと呟いた。

 祥真は果たしてどういった筋書きでここに残り、捜査、暴動鎮圧をしているのか。

 機捜隊員(門番)に警察手帳を提示し、敷地内に入れてもらおうとしたが、その前に、ユミルと政宗が門まで歩いてきたのが見えた。

「ユミル、政宗…!」

 ユミルはレミントンを下げ、どうやら頬に掠り傷。政宗はタバコをくわえて疲れたように手をあげた。

 手ぶらだ、どうも。

 それはこの戦いの休戦を物語っている。第一に二人ともわりと無傷に近いのが、少しホットしてしまう自分がいて。

いかん。

「お前ら…」

 門から入ろうとするも門番に「危ないです、|警部《けいぶ》」と言われたことに腹立たしさを覚えた。

 確かに今や、ある意味一介の警部だ。

「…気が短ぇな、流星」

 政宗が軽く笑う。
 異様な空気に、場は妙な緊張を孕んだ。

「…政宗…。
 あんた、どうした」
「あぁ、悪いな。
 残念ながら…もぬけの殻だ」
「は?」
「…証拠は爆破された。何もかも、得られる物なんてなかったよリュウ」
「何?」

 そんなわけがない。
それではこの事件の意味はなんだ。

 門から出て来て、政宗が門番に言う。

「いつまで突っ立ってんだ。てめえらのボスは案件全部かっぱらって帰ったぞ、おい」

 イライラしたように吐く政宗の一言が染みる。

なんだって?

「何、それ」
「何もなんも、てめえらの壮大な喧嘩のせいで全部爆風の中だ。
 あぁ、胸クソ悪ぃ情報はたくさん得た。
 だが、真は見えなかった。不自然にも、それといったもんは、そうだな…。
 ゼウスの社長は黒だという伝票くらいしかなかった」
「なんだそれ…」
「キレイさっぱり消されちまったが、まぁ少し位は持ってきたぞ。名簿だとかな」
「つまり…。
 遅かった、これに尽きるよ」
「なんでだよ、おい…!」

 掴み掛かりそうになる自分を押さえ、拳が熱くなった。

「リュウ、君のせいじゃない。
 ただ、ドラッグに関する決定打がなかった。ジャッジはきっと、ショウのチームがやるんだよね?」

 門番に聞くが、「いや…」という反応。

「あいつが何をした」
「知らない。けど君は俺にあいつを止めろと命じたね。止まったのかもしれない」
「は?」
「お宅らの喧嘩はもういい。
 そうだ潤、」

 ふと政宗が潤を見つめて言った。

「…なに」
「傷は大丈夫か」
「別に」
「そうか。
 お前、山下祥真と知り合いか?」

なに。

 振り返れば潤は、驚いた表情を一瞬見せたが、しばらく沈黙して俯き、「いや、」と答えた。

「…潤?」
「知らないなら、まだいい。
 知っているならお前、厄介だぞ」
「何を言っているかわかんないけど」

なにそれ。

「…何を掴んだ、政宗」
「いや、何もだ。不覚にもな。ただ少し、見えた」
「何がだよ」
「…結構…。
 ふ、七年かかるだけある。これは思った以上に壮大だ。
 とにかく帰ろう。俺も頭は冷やしたい」

確かに。

「取り敢えず、今は生きてる」

そうか。

「無駄足だったのか」
「わからん。
 全員乗れ。俺が運転してくわ」

 空気が一変。
 いつも通りに政宗が笑った。

「取り敢えず任務は完了だな…」

 その任務すら。

「流星、今は帰ろう」

 政宗が肩に手を置くが、ふいに払ってしまった。

 ただただ、悔しさが込み上げ、歯を食い縛ることしか出来ない。

「畜生…」

まだ、遠い。

 溜め息が聞こえた。

俺は今、何をしてるんだ。
わからん。ただひとつ聞きたい。

「祥真はどうした」
「…帰ったよ」
「そうか」

 何がしたい。ただ、

「ユミル、ありがとう。
 みんなもありがとう」
「うん、」
「納得は出来ないけどな」

潤が言うので。

「まぁ、俺もだ」

 そう返せば、「やめろよぶちょー」と、いつも通り潤は軽く返してきた。

「ただ闇にはしないさ。悪いが俺は追いかけるぞ」

 政宗がそう言った。

「そうだな…」

 エレボスと昔の戦友と、恩人に。
まだまだ、近付けない。

 取り敢えずこの場は撤退を余儀なくされた。
 近道は、出来ないらしい。

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