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朱里が死ぬまで翡翠は、ほうじ茶を毎日運んでから、仕事を青鵐や太夫から教わるようになった。
人間というのは簡単で、やはり千鳥にイビられるだとか、却って心配する者がいるだとか、そんなものを見過ごして7日ほど、藤島が面を見たくないと言うのだから部屋の前にほうじ茶を置く、部屋の前にある薬を朱里に届ける、そんな生活で過ごして行く中、最期に朱里が「翡翠、」と呼んだ日に朱里は死んだ。
病は、自覚したら早いものだと学んだのだけど、最期に戸を開けたとき、朱里の部屋はそこら中、花のように血痕が残っていて。
「ふはは、」と、笑ってくれたのだった。
「生きるとは何かねぇ」
が遺言となり、8日目に薬もほうじ茶も置きっぱなしで遺体に気付いたのだった。布団から出ようとしたのか悶えたのかは誰も見ていない。
悟るとは何かねぇと翡翠はそれを見て静かに泣いたのだけど、あれは悟っていたのですかと聞く相手はおらず。
何故人は死に、生き。
自分はいままで生きていたのか、極楽に死ぬ。それは何かという悟りだけは学べなかった、あの金鐘楼で。
花が咲くような、鳥が飛ぶような。後付けの比喩はいまも胸にある。たまにそれを確認する瞬間は一人で眠るときなのだと、不眠になったりすることがあるのだけど。
忘れない、それが過去。
時世に置いていかれた、動乱の始まりだった。
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