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 バキぃぃぃ!!と、ものっそい痛そうな音を立てて山田、白目剥いてぶっ倒れ痙攣している。唖然としてあまちゃん、一瞬反応遅れたが状況把握。

 どうやらげんちゃんが思いっきり横キメで山田をぶっ飛ばしたようだ。

 メンバー唖然。スタッフ掛け寄り、あまちゃん、へなへなと座り込んだ。
 俺も駆け寄ってみた。

 スタッフが「山田さん、大丈夫っすか」と不躾な態度で聞いている。これは最早彼の特徴らしい。

「マキ!」
「大丈夫、あまちゃん!」

 ベースとドラムがあまちゃんに寄り添い、しかしげんちゃんは立ったままバツが悪そう。あまちゃんを見下ろして言葉を探している。

 まぁ確かに、折角あまちゃんの器物損害の真相が明らかになったのにと、きっと思ってるんだろう。

「ちょ、弦次!」

 このときばかりは流石にドラムもげんちゃんとは、呼ばなかった。それにまた気まずそうだ。

 げんちゃん、折角仲間になれるチャンスだったのに。

「…ハゲ、」
「んあ?どうしたマキ」
「…こいつ…このメンヘラメルヘン…。
 めっちゃ勃起してた〜{emj_ip_0792}もー完勃ちで、ぐりぐりって…怖ぇ、マジ怖ぇよ〜!」
「はぁ?へ、え、えぇぇぇ…!」
「…壮絶だねあまちゃん」
「ね、怖いよねふみとー!俺もう立てねぇ、けどなんだかアドレナリンは出たー…も、どうしよ、な、」

 そして小さな背中は小さく上下し、目元を忙しなく拭い始める。
 子供のようなその姿に、なんだかもう、笑えてしまった。

「それってその人いなかったらあんた死んでましたね、天崎さん」
「ふん、うぅ。
 ね、そいつ言ってた、サポートは、抱かれに行くって、げんちゃん、活動休止中こんな気持ちだったん?」
「え?いや、多分違うけどうん…まぁ、うん、そう」

 めんどくさそうだなぁ、げんちゃん。

「嫌だったんだ、こんな気持ちだったんだぁ…!
 俺、知らんかった、げんちゃん!」
「うん、うん、もーそうだね、はいはい。気乗りしねぇセックスみてぇだよはい」
「俺もうげんちゃん、活動休止とか、んなん…言わないぉ!げんちゃんも他の男に抱かせない!」
「いや抱かれてねぇ抱かれてねぇ相当違ぇ…山Dの感性股間中心だよあまちゃん」
「いやぁぁ!」
「え、面倒臭いなにこれ」
「まぁまぁ」
「受け取ってやってよげんちゃん。こいつバカなんだから」
「え、てかマジ?俺こんな形で正規でいいの?」
「性器しゃない!」
「うるせぇ黙れショタ声。
 だってそれって、俺も…は、ハゲって呼んでいいの?」
「いやハゲ…まぁいいでしょう」
「え、じゃぁ、ふみとって、呼んでいいの?」
「いいよー。俺待ってたよ」

 げんちゃん、クールに俯き、あまちゃんを見つめる。そして何故か俺を見つめた後にメンバーを見つめ、「…ありがとう…」と言った。

「好き、愛してる、I love future」*
「うわぁ…」

 感極まったげんちゃんの一言。なんて「センス皆無…」あまちゃんに俺も同意。
 しかしそれにげんちゃん「うるさいわ」と照れ臭そう。

 幻滅している俺に再びげんちゃんは視線を寄越す。そして言った。

「今更だけど…あんた名前は?」
「は?」
「いやぁ、ナンセンスでベタだけど。やっぱこーゆーのってそういう感性じゃなく人として。あんたのおかげだなって思ったから」

 そうげんちゃんが言うとあまちゃんは振り返り、顔ぐずぐす(けど可愛かった)ながら、俺に手を合わせてお辞儀をした。

 あぁ、これってそーゆー意味だったの。
 ちゃんとファンサしてんじゃん。

「…古里|昴《すばる》です」
「かっけぇ!」
「え、ふるさとって?」
「古い里にあの…日の下に卵みたいな字」
「すげぇ、エキセントリック!
 スバル君、ふるさと納税スバルくん」
「違いますよ」
「俺天崎真樹!よろっく!」
「改めまして、ギターのげんちゃんこと奥田弦次です」
「ドラムの国木田ナトリっす」
「ベースの栗村文杜です」
「みんなで“エレクトリック・レインボー”通称“でんにじ”!よろっくおねがいしゃーす!」

 にっこにこの悩殺スマイルクソテンションであまちゃんは言った。やっぱり手を合わせてお辞儀。

 あぁ、やっぱりはまっちまった。よかった、ライブ来て、本当に。

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